立海ぶっく
□芸術的センス
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「ルノアール?」
「うん、凄く良い画家なんだ。」
「聞いたことはあるけど見たことないなぁ。」
言えば精市くんは「今度小さめの画集を持って来るよ」と言って微笑むから、私は「ありがとう」と微笑み返す。精市くんは同級生だけどテニス部の部長さんであり、美術に関しては私の先輩と言っても過言じゃないような人。
「私はメジャーな感じだけどゴッホとかが好きだなぁ。」
「うん、ゴッホは俺も好きだよ。どこの学校でも美術室に行けば、1つくらいはゴッホの絵を見れるんじゃないかな。」
「そういえばうちの学校にもあったよね。」
「ふふっ、そうだね。」
言いながら軽く笑う精市くんに疑問を投げ掛ければ、何故か“いい子いい子”と頭を撫でられて。拗ねたフリをした私に、精市は「ごめんね」とまた“いい子いい子”する。適当に謝ってるのがよくわかる。精市くんらしい。
「名無しさんが凄く楽しそうに話すから、見てて微笑ましくて。」
「それって子供扱いしてるってこと?」
「さぁ、どうだろうね?」
「もう、精市くんの意地悪!」
可愛い可愛い名無しさんちゃん許して。だなんて、尚更私を子供扱いするような発言をする精市くんは本当に意地悪くて、精市くんの方が子供みたいにも思える。
「じゃあもっと意地悪なこと言うけど、」
「な、何…?」
「本当に俺が1番好きな人はね、ルノアールじゃないんだよ。」
「うん?どういうこと…?」
「名無しさんっていう、絵を描くことにセンスが感じられない子が1番好きなんだ。」
好き?私が?聞き返せば、精市くんは頷いて「本気で、ね。」なんて笑う。それは褒められたことなのだろうか。絵を描くことにセンスが感じられない子だと言われてるのに、喜んで良いのかどうかイマイチよくわからないんだけれど。
芸術的センス
サイト1歳記念(20100925.闇†風)