立海ぶっく

□それでも
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あたしの目の前には大好きな大好きな彼の背中があって、そのせいかあたしの心は緊張と安心感で満たされている。彼が急に振り向いたらどうしようか。あたしはきっと変な顔をしちゃうんだろうな。だけどその反面で振り向いてくれないかな、なんて期待してるあたしがいて。



「………はぁ。」

「名無しさん、そんなに俺の背中を見つめても何も出ないよ。」

「へ!?」

「しーっ。授業中だよ、名無しさん。」



あたしが思っていたのとは全く違う彼の行動に驚いて変な声を出せば、彼は軽く笑って、立てた人差し指を口の前に。すると彼のもう片方の手に鏡が持たれていたのを見て、あたしは要約彼の急な言葉が発せられるまでの成り行きを理解した。



「精市…もしかして、あたしのことずっと見てたの?」

「ふふっ、どうだろうね?」

「はぐらかさないでよ!」

「授業中だって言ってるのに、また大声あげて…」

「精市のせいだもん。」



彼の手に持たれた鏡にはあたしのぶっさいくな表情が映っていて、思わず鏡を取り上げてみればそれは紛れも無くあたしの鏡だった。いつの間に奪われていたのやら。
彼の悪戯っ子みたいな笑みに、あたしは溜息を一つ零す。彼に敵わないのはわかってるけど、何だか悔しくてやる瀬ない。



「そんなふて腐れた顔してると、そういう顔になっちゃうよ?」

「だって精市が意地悪。」

「ごめん、そういうつもりじゃなかったんだけど…お詫びに今日の放課後デートする?」



あたしにダメって言わせないような顔しておいて敢えて聞いてくるなんて、それが意地悪だって言ってるのに。反抗しちゃえば良いのに、あたし。それなのに頷いちゃうあたしはやっぱり彼が大好きで、意地悪されても許しちゃうくらい甘い。それはあたし自身が1番よくわかってるつもり。



それでも

(……アイス買ってね。)
(わかったよ。)



2010企画(20100911.闇†風)

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