立海ぶっく

□bashful
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意外、だった。



《明日、その、でででデートに行かないか?》



すごく吃りながらも、電話の向こう側にいる弦ちゃんは確かに私にそう言った。もしかしたら聞き間違いかもしれないと思って何回も何回も繰り返したけど、結果は同じ。弦ちゃんが私をデートに誘ってくれてる。

それで今日、ウキウキワクワクしながら私は待ち合わせの校門へと向かう。見た感じ、弦ちゃんはまだ来てないみたいで、私は校門の前に立って弦ちゃんを待つことに。寄り掛かろうとも思ったけど、昨日の夜遅くまであれこれと考えてお洒落してきた服を汚したくない。



「あ、弦ちゃん!おはよう!」

「おはよう!すまない、待たせてしまったようだな。」

「大丈夫だよ!ついさっき来たところだし!」

「そうか。そ、その、服、に似合ってるぞ…!」

「ふふ、ありがとう!」



それから少しして来た弦ちゃんは、私を見るなり顔を真っ赤にして。可愛い?って聞いたら物凄く吃りながら可愛いって返してくれて、それだけで嬉しくなる私って単純?そのお礼がてら弦ちゃんもカッコ良いって言ってあげたら、真っ赤な顔をもっと真っ赤にしてくれた。



「それで、どこに行くの?」

「幸村達から遊園地のタダ券があるから行ってこいと勧められたんだが、」

「ん?」

「…嫌ならやめて構わない。どうする?」

「遊園地で良いよ!私、遊園地好きだし!」



そう答えれば、弦ちゃんは「わかった」って言いながら微笑む。今更だけどいつもとは違って帽子を被っていない弦ちゃんは、いつもよりも表情がわかりやすくて。いつも優しいけど、いつも以上に優しく見える。



「ゆっきーに後でお礼しないとね。」

「あぁ、そうだな。」



そこから遊園地までは歩いて1時間もかからなくて、私達は着いて早々にジェットコースターへと向かった。弦ちゃんと遊園地に来るのは初めてだから弦ちゃんがどうなのかはわからないけど、私はジェットコースターが大大大好き。



「弦ちゃん、大丈夫?」

「あ、あぁ、」

「あ!もう少しで落ちるよ!」

「ちょ、待っ、キェェェェエエエ!!」



乗ってから後悔したのは言うまでもない。弦ちゃん本人は大丈夫だって言ってるけど、私から見たら全然大丈夫なんかじゃなくて。確実に乗る前より5歳は老けたと思う。私が買ってきてあげたお茶を飲んでいるところを見ると、尚更おじさん臭い。



「本当に大丈夫?」

「あぁ、大丈夫だ。」

「でも、」

「俺はお前が楽しいと感じるならそれで構わない。」



不意に手が伸びてきて弦ちゃんは私の頭を撫でると、立ち上がって私に目を向ける。そして差し出された手に掴まって、私も立ち上がった。



「まだまだ時間はあるから、ゆっくり回るとしよう。」

「そうだね!」



答えればそのまま歩きだす弦ちゃんは私達が手を繋いでいることに緊張しているのか、歩き方が若干ぎこちない。なんて思っていると突然弦ちゃんは立ち止まって、振り返る。



「や、やはりこっ、ここ恋人だからと言って手を繋ぐというのは、我々の歳からして早いのだろうか…!」

「そんなことないよ!」

「そうか、ならば繋いでいても構わないか?」

「うん!」



私が答えたと同時に少し微笑んで、それからすぐに背を向けて歩きだす弦ちゃんの顔が赤いであろうことは容易に想像出来る。
それから私達はもう一度別のジェットコースターに乗ったり、お化け屋敷に入ったり、更に別のお化け屋敷に乗ったりした。勿論、弦ちゃんは叫びまくっていたんだけど。



「クソッ、たるんどるぞ、真田弦一郎!」

「べ、別にそこまで自分を責めなくても…」

「だが、」

「あ!あれ乗ろう!あれなら弦ちゃんも楽しめそうだし!」

「観覧車か。構わない、乗るか。」



私が指差す巨大観覧車を見上げながら、弦ちゃんはそう答える。ジェットコースターで叫んでた弦ちゃんだって観覧車は大丈夫なはずだし、何よりデートの最後に観覧車なんてロマンチックなことをしてみたかったし。



「名無しさん、」

「何?」

「いや、何でもない。…綺麗な景色だな。」

「うん。あ、もうすぐ頂上だね!」



まさか、弦ちゃんは周りよりちょっと大人な人だから、そんな子供じみたベタなことなんてしないと思ったのに。頂上に着いた瞬間、弦ちゃんの唇が私の口を塞いでいて。真っ赤になった弦ちゃんに私はただ微笑む。



「…また、来ようね」

「あぁ、そうだな。」


bashful


20100404.闇†風

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