立海ぶっく

□冬、道のど真ん中。
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寒くて寒くて寒くてこのまま私は凍え死ぬんじゃないかって、馬鹿みたいなこと考えながら歩く。隣に居る雅治はいつもみたいに何考えてるのかわかんない顔してるから寒いのかどうかすら私にはわからないんだけど、寒がりなのはわかってるからこっそり手を繋いでみたりして。



「何じゃ、寒いんか?」

「うん、寒い」

「甘えん坊じゃのぅ、お前さんは。」



カッコ付けてるけど震えてるのが繋いだ手から伝わってきて、やっぱり雅治も寒いんだなーなんて同じ感覚だったことが嬉しい。単純な人間だってことは十分わかってるんだけど、それでも単純であるのはこんな私を好きって言う雅治が居るから。

気付けば手を繋ぐ力は自然と雅治の方が強くなってて、歩くのだって自然と雅治が車道側になってて。詐欺師だとか言われる雅治だって普段はごく普通の優しい男の子なんだって、知ってるのは私だけで十分。



「甘えるの好きだもん!」

「甘いのは苦手ぜよ」

「甘えられるのは好きなくせに?」

「あー…まぁ、」

「素直じゃないんだから!」



言って笑ってやれば、ポケットに同居していた私の手はあっさり追い出される。そこが素直じゃないって言ってるのに、なんて更に悪態ついたら置いて行かれそうになって慌てて追い掛けた。流石、全国常連校のテニス部員ってだけあって、こっちは駆け足だってのにギリギリ追い付くか追い付かないかくらいのペース。



「雅治速いよ…!」

「別に普通じゃろ。」

「どこが!」



はぁはぁと必死に酸素を取り込もうとする私とは裏腹に、息も切らさず歩く雅治は憎たらしい。だけどちょっと怒った風に「待ってよ」って叫んだら振り向いて戻って来てくれて、再び雅治のポケットで同居させてもらえるみたいで嬉しくて。



「暖かい…」

「俺は寒いぜよ」

「私が暖めてあげようか?」

「名無しさんの方が冷たいけぇ遠慮するナリ…」

「ちっ」

「舌打ちしなさんな」



こつんと軽い拳骨をされたから笑い返せば、突然キスなんかされちゃってそういう不意打ちとか狡い。そうやって私がドキドキしてるのを見て笑うんでしょ?ほんともう意地悪なんだから。



「くくっ、顔赤いぜよ」

「寒いからだよ」

「さっきは赤くなっとらんかったのにのぅ?」

「うっ、煩いよ!」

「プリッ」



嘲笑うような顔をする雅治に見られてるのが悔しくて、雅治の弁慶に蹴りを入れてやった。そしたら予想以上に痛かったみたいで、雅治は咄嗟に弁慶を抑えてうずくまる。可哀相?申し訳ない?悪いけどそんなことこれっぽっちも思わなくて、寧ろ鼻で笑ってどや顔。



「ちっ」

「舌打ちなんて情けないよ!」

「名無しさん…」

「何?」

「お返しに、」



腕を掴まれてるせいか体が強張ってるせいか、ゆっくり立ち上がる雅治から逃げられない。別に怖い表情でも怖い声でも無いのに、私の体が動いてくれる気配は無くて。

「窒息の刑、ぜよ」その意味を理解した頃にはもう手遅れで、目の前に居る雅治の唇は確実に私の口を塞いでいる。苦しくて雅治の胸をどんどんと叩いたり殴ったりしてみるけどびくともしない雅治は、もしかしたらさっき弁慶を痛がったのは演技だったんじゃないかって思えてくるくらい頑丈。



「んーっ!」

「………」

「んっ!んんー!」



何なの虐め?後頭部がっちり抑えちゃって、これじゃあ鼻で息するのも苦しくて意識失うんじゃないか、なんて思ってたら少しした後にやっと雅治は私から剥がれて。とりあえず一発腹を殴ってやった。案外腹筋が硬くて殴ったことを後悔したけど。



「マジで死ぬって!」

「生きとるじゃろ」

「生きてるけど…!」

「別に問題なか。」

「問題大有りだってば!」



大体、いくら人が居ない道だからってど真ん中でキスしてるってどうなの?バカップル中のバカップルに見られるじゃん、私達!あぁもう恥ずかしいったらありゃしない!

文句で雅治をまくし立てれば、またしても「くくっ」って笑われて。しかも今度は余裕たっぷりな表情だからすごく悔しい気がしてた。



「それくらい好きってことじゃけぇ、仕方ないじゃろ?」



はずなのに。それは死ぬほど好き、死んでも好き。そう受け止めて良いのかな?なんて自惚れてる私が居た。






リクエスト/20100207.闇†風

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