その他ぶっく
□イブイブ
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「若は年上ってどう思う?」
「は?」
マネージャーからの唐突な質問に、俺は首を傾げた。どう思う、っていうのは、どういう意味だろう、と考える。先輩的に、マネージャー的に、女的に。色々と解釈があるものを一括りにして「どう思う?」という名無しさんさんの質問が、既にどう思ってるのかわからない。
「ほ、ほら、クリスマス、だし……。」
「はぁ、」
「何ていうか、」
この発言から、さっきに質問は“彼女にするなら“という意味で捉えるべきなのか、と漸く理解した。けれど、そんなこと、考えたこともない。否、考えようともしなかった。
それはあくまで、名無しさんさんに興味がないとかそういう訳ではなく、寧ろ名無しさんさんが俺に興味なんかないんじゃないかという思いから。
「俺は寧ろ、名無しさんさんに聞きたいですけど。」
「何を?」
「年下は、どう思いますか。」
名無しさんさんはすごく大人っぽい人で、けれど明るくて、本人は気付いてないかもしれないが、部内の人気者だ。練習が夜遅くなった時は誰か彼かが家まで送り、午前練習の時は誰か彼かと昼食を外で済ませるような人が。更に、名無しさんさんの知らないところでは、部員達の壮絶な争いが起こっているくらいなのに。何故、その中で唯一、俺を。
「あ、あたしは年下が……好き、だけど……。」
「俺も年上、好きですよ。」
「えっと、」
「では単刀直入に聞きますが、」
言いかけて、ふと言葉を止めた。
聞いても良いのか、という考えが頭を過る。仮にここで、俺と名無しさんさんの話が全く見当違いなものだとしたら。これは単に俺の意見を聞いただけで、名無しさんさんの相手は他の年下男子かもしれない。というか、そうだとすれば、さっきの「俺も年上好き」発言の時点で既にアウトだ。しまった、やらかした。
「わ、かし……?」
「あ、えっと、その、」
どうするべきだろう。いっその事、俺様部長みたいに「俺のこと好きなんだろ、アーン?」的なことを言って、違うと言われたらギャグですとか何とか適当なことを言って誤魔化すか。それとも、やっぱり何でもありませんと言って撤退するか。だがそれは逃げたも同然であり、男としてみっともない。それに、名無しさんさんのことだから、引き止められて「何でもないなんて言わないで、ちゃんと最後まで話して。」とか言うに違いない。
そうとなれば、前者で乗り切るしかない。
「あの、」
「うん?」
「……俺のこと好きなんだろ、アーン?」
「…………」
言えば、名無しさんさんはキョトンとして、数秒の沈黙の後に首を傾げた。
「えっと、その場合の“俺”は、若ってことで良いんだよね?」
「え?あ、はい。」
「それじゃあ、答えはYESで。」
YES?それはつまり、俺のこと好きなんだろ、からの、はいそうです、という?
反射神経はそれなりに良いはずの俺が、名無しさんさんの言葉をうまく飲み込めない。その言葉の意味をしっかりと理解できない。返すことが出来ない。
そんな俺を見兼ねてか、名無しさんさんはふわりと笑って「あたしは若が好きだよ。」と付け足す。それから更に、若は、とも。
「俺は、」
「うん、」
「俺も、好き、です。名無しさんさんのこと。」
「本当?それじゃあ、」
「あ、待ってください。」
咄嗟に名無しさんさんの言葉を遮った。名無しさんさんが次に言わんとしていることは、というより、何の目的で話しかけてきたかは、初めのうちから十分に分かっている。だからこそ、その次に言うであろう台詞は、俺から言いたい。
「名無しさんさん、クリスマスの2日間を俺にください。」
瞬間に赤くなった顔を見て、その可愛さのあまりにキスをしてしまったところを誰にも見られていないと良いが。
イブイブ
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日吉ってこんな喋り方?イマイチ喋り方がよくわかんない。っていうかクリスマス関係ないことは触れない方向で。
20111224.マガジンクリスマス企画