その他ぶっく

□本当は、
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「一斗、誕生日だよね?」

「だから何?あぁ、誕生日プレゼントか、ありがとう。」

「ちょ、ちょ、待ってよ…!」

「何」



あたしとしては「誕生日おめでとう!」って盛大な感じで渡して「あぁ、ありがとう」とか言うちょっとデレた一斗が見たかった。それなのに一斗はあたしの手からプレゼントを奪い取って、しかも棒読みのありがとう。

言い返そうとすれば不満そうに聞き返して来るもんだから、沢山言いたいことがあったはずなのに言い返せなくなる。



「もっと何か、こう、」

「は?」

「何て言うか、もう少し祝わせてよ!」

「いや、別にいい」

「そうじゃなくて!あたしが祝いたいの!」



ふーん、なんて流そうとする一斗はあたしを鼻で嘲笑って。憎たらしい。悔しい。

こんな反応だってわかってたらもっと驚かしたりとかしたのに、多分。まぁそんなことしたら逆に怒られたりしそうな気がしなくもないから、やらなくて良かったと思ってるけど。だけどやっぱり不満。



「じゃあ早く祝ってよ」



かと思えばニヤッと笑って偉そうに言い出す一斗に、あたし思わず不満を顔に出す。簡単に言えば膨れっ面っていうやつで。



「うわ、ぶっさいく」

「酷い!」

「素直に言っただけだし」



言えば一斗はあたしの頬を摘んで、引っ張ったり戻したりを繰り返す。何、この仕打ち。あたしは一斗にとって玩具みたいなもんなわけ?そんなの嫌だからぶんぶんと顔を振ると、更に強く摘まれた。



「痛いんですけど」

「あっそ」

「意地悪!」

「名無しさんがMなだけじゃない?」

「なっ、違う!」



まさか一斗の口からそんな発言が出るなんて思ってなくて、思わず反抗した声が部室内に響いて恥ずかしい。茜なんてあたし達の話を聞いてたのか、大爆笑。そんな茜にテニスボールを投げ付けてから、一斗を睨んでみせる。



「怖くないけど、睨んでるつもり?」

「うっ…、睨んでる、つもり…だもん」

「へぇ、まぁいいや。で、祝ってくれんの?くれないの?」

「そりゃあ祝うよ!」

「ふっ、」



あれ、何であたし嘲笑われた?まぁいっか。やるからにはちゃんと祝いたいあたしは靖幸に頼んで部活中止にしてもらって、実は用意してあったりした手作りクッキーとお菓子を机に並べた。



「何だ名無しさん、ちゃんと用意してたんだ?」

「ふん、さっき大爆笑してた茜にはあげないんだから!」

「う…ケチ」

「知りません!」



わざとらしく背を向けて、あたしは一斗に目をやる。ツンツンしてるせいか喜んでるかどうかはよくわからないんだけど、多分喜んでくれてるはず。そう信じてる。



「一斗、楽しかった?」

「まぁまぁ」

「…そっか、」

「何、落ち込んだの?」



帰り道、さりげなく聞いてみると一斗はニヒルにそう返してきて。そんなの落ち込むに決まってる、なんて思ってると一斗は溜息をついてそれから突然手を握ってきた。



「別に楽しくなかったなんて言ってないんだけど、」

「え、それってどういう…」

「鈍感」

「何それ意味わかんない!」

「別にわかんなくて良いし」



意味不明なことを言い出す一斗に、あたしは眉間にシワを寄せて首を傾げる。だけど少し考えると簡単に答えは出てきて、思わずにやければ「キモい」って言葉が飛んできて。今のあたしにはそんな言葉聞こえないけど。



「本当は楽しかったんでしょ?」

「……さぁ」

「もう!素直じゃないんだから!」

「煩い」

「一斗大好き!」



素直じゃないしツンツンしてるけど、それでも一斗が優しいのはよくわかってる。嬉しくなって笑ってみせればさっき握られた手を離されて、それどころか一斗は自分のポケットに手を突っ込んでしまった。

そんな一斗に抱き着けば、まだ冬なのに「暑い」とか言われて。そこが素直じゃないって言ってるのに、ちょっと顔を赤くしてそっぽ向いて歩く一斗は可愛い。






(暑いんならそのマフラー貸してよ)
(寒い)
(へへっ、可愛い!)
(は?キモいんだけど)
(………)


誕生日/20100217.闇†風

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