純情エゴイスト
□星に願いを
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「・・・ヒロさん?」
何を思い立ったのか、上條はいきなりペンを取り、短冊に何かを書き出した。
野分は、一瞬驚いたようだが、すぐに笑みを取り戻し、楽しそうに書き終わるのを待つ。
静かな夜に、ペンの音だけが響く。
「・・・・・・出来た」
上條は、ふぅとため息を1つつき、背伸びをする。
終るのをずっと待っていた野分は、やっとかと身を乗り出して聞く。
「何書いたんですか!!見せて下さい!!!」
「っ!!!いや、お、お前には無理だ!!!」
短冊を野分が取り上げようとした瞬間、上條は一気に顔を紅くし、それを隠す。
首を傾げる野分を見て、さらに上條は続ける。
「お前にだけは無理だ!!諦めろ!!!」
そう言うと、上條は野分に背を向けてしまう。
野分は、その背に不満をぶつける。
しかし、そんな姿も全て、ただ愛しい。
「ヒロさん、俺、なんて書いたか教えましょうか?」
野分は、ゆっくり上條の身体を後ろから抱きしめる。
上條は一瞬震えるが、すぐに頷くのが分かる。
野分は、嬉しそうに笑みを浮かべる。
「ヒロさんと、絶対離れませんように」
野分の腕の力が強さを増す。
「俺は、ヒロさんと一年間離れた事がありました。その時、俺にとってどれだけヒロさんが支えだったか知りました」
上條の身体に熱が宿る。
「きっと空のふたりも、同じ気持ちだろ思います。だから」
野分の声が、一層強さと決意を増した。
「俺は、もぅヒロさんとは離れない」
上條は、ただ嬉しかった・・・
野分が、此処まで自分を思ってくれるのが。
そして、
素直になれない自分が、もどかしかった。
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