純情エゴイスト

□再会。そして・・・
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上條は、顔を引きつらせながら、目の前の人物に問うた。

「何で、ここに居るんだよ・・・秋彦」

「たまたま近くを通っただけだ。気にするな」


と、上條に笑いかける秋彦。

上條は、言葉が詰まっていく感覚を覚える。


宇佐見秋彦。

俺が、初めて恋をした相手・・・


「でも、何で今更・・・」

「前に、引越ししたって言う連絡貰っただろう?そのままにしておくのも癪に障るからな」

「べ、別に気ぃ使わなくて良いのに」


あまり、会いたくない

まだ、秋彦の顔を見ると心が痛むから・・・


「良いだろ?馴染みの奴にあって何が悪い」

そう言うと、秋彦は上條の頭に手を置く。

上條は、目を見開かせ、秋彦を凝視した。


こいつの手、前より暖かい・・・?


今までの付き合いの中で、一番暖かいかもしれない・・・


「なぁ、弘樹。今暇か?」

「あ、いや、その・・・暇、だけど」

「今から何処か行かないか?久しぶりに話がしたいんだ」

秋彦は上條の頭に置いていた手を下ろす。

上條は、緊張が解けたように息を吐ききった。


手の感触、野分とやっぱり違う・・・


秋彦よりも幼さの残る暖かさ。

今、凄くその手に触ってもらいたくなった。


「・・・ご、ごめん。今度で良いか?いきなりだと、辛い」

「そうか?用意があるなら待つが・・・」

「ち、ちがう。でも、ホント今日は勘弁・・・ちょっと、待ってる人居るから・・・」

秋彦は首をかしげた。




「もしかしてあの男子学生か?」


上條は、勢いよく顔を上げる。

「お前、あの男子と関係あったのか」

「そ、そういう意味じゃ・・・」

上條は、何とかして否定しようとしたが、次の秋彦の言葉に、何もかも忘れた。



「・・・お前らしくも無い奴を相手にして・・・」




何だ?

今、俺野分を馬鹿にされたのか?

何だ?

胸が熱くなってくる。

何だ?

凄く、感情は乱れてくる。




上條が再び正気を戻した時は、上條は秋彦の整った顔を平手で容赦なく叩いていた。

流石に驚いた秋彦は、目を丸くして上條を見る。


「ひ、弘樹?」

「・・・・・・・・・するな」


震えた肩を抱きながら、上條は秋彦を睨む。


その目には、涙が浮かんでいた。





「俺の野分を馬鹿にするな・・・・・!!!」




「おい、弘樹!!」

上條は、秋彦に名前を呼ばれながらも、振り返らずに部屋のドアを乱暴に閉めた。




秋彦を殴ってしまった。

驚いただろうな、痛かっただろうな・・・


でも、


俺は、野分を馬鹿にする奴は、許せないんだ・・・








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