黒執事

□気付いて、マイロード・・・
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夜も更けた頃。

セバスチャンはシエルの部屋にお茶を運ぶ最中だった。

静かな屋敷に、台車の転がる音だけが響く。

「おや、あれは・・・」

シエルの部屋に近づいてくると、部屋の前に誰か居るのが見える。

良く目を凝らすと・・・


「ソーマ様・・・?」


いきなり名前を呼ばれ、身を震わせこちらを見る顔は、明らかにソーマのものだった。

セバスチャンはため息をつき、ソーマに近づく。


「どうしたんですか?坊ちゃんに何か用でも」

「お、お前には関係ない!!ただ、遊びに来ただけだ!!」

ソーマは大声をあげ、セバスチャンに抗議する。

セバスチャンは呆れ顔でソーマを見下ろす。


「そんな事なら、明日になさって下さい。坊ちゃんはこれから・・・」

とその時、


「騒がしいな。随分と・・・」


中から、シエルが迷惑そうに顔を顰めて出てくる。

ソーマは助け舟に縋るが如く、シエルに勢い良く抱きつく。


「シエル!!夜、一緒に遊ばないかっ」

「ソーマ様、坊ちゃんはもう眠られると・・・!」


セバスチャンが声を上げると、


「別に良い。少しくらいなら相手できる」

シエルは、片手を挙げセバスチャンを制す。

セバスチャンは驚いた表情でシエルを見る。


「良いのですか?明日は色々と・・・」

「大丈夫だ。僕もそんな子供じゃない」

シエルは、身体にソーマをくっ付けたまま部屋に入る。

セバスチャンは台車を押しながら後に続いた。

もうベットに入っていたらしく、シートが崩れている。

ソーマはそのベットの上に胡坐で座り込み、シエルの事を待っている。


「あまり夜更かししないでくださいね」

「分かってる。今日はどうした?お前らしくないな」

「えっ・・・?」

「いつも以上に、僕とソーマを離したがる。あいつが何かしたのか?」



ズキ



胸の痛み、

セバスチャンは、意味が分からないとばかりに顔を歪める。


(私が、二人を離したがってる・・・?)


「あ、あと、ソーマの分のカップも持って来い」

「あ、かしこまりました・・・」


セバスチャンは鼓動が早くなるのを感じながら、シエルの部屋を後にした。


今日の私は変なのか・・・


セバスチャンは、顔を手で覆った・・・







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