黒執事
□夢の続きを
2ページ/3ページ
「気持ちは落ち着かれました?」
「あぁ・・・もう大丈夫だ」
セバスチャンに入れてもらった紅茶を口に運びながら、シエルは息をついた。
(いまだに悪夢でおびえるとはな・・・)
あまりにも不甲斐無く、恥ずかしいものだ。
「・・・セバスチャン」
「はい。何でしょうか?」
セバスチャンは口元を少し緩ませこちらに微笑んだ。
「・・・月、今日は満月か?」
「・・・・そうですね。見事な満月ですよ」
窓の奥では、大きく美しい月が、夜の屋敷を照らし出す。
「・・・夜は、時間が長く感じるな」
独り言のつもりだった。しかし、セバスチャンには聞こえたらしく、こちらを振り向いた。
「でも、そろそろお休みになった方が良いですよ。身体に障ります」
長い指が頬に触れる。
シエルは目を細め、その手を軽く振り払った。
「あと少しだけ、月を見させてくれ」
セバスチャンは困ったように首を傾げ、微笑んだ。
「少しだけですよ?マイロード」
月はさらに濃くなった闇に光り輝き、シエルを包み込んだ・・・