黒執事
□黒き薔薇 我が手の中に
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それは、昨日まで遡る・・・
「シエル坊ちゃん〜ちょっと良いですか〜?」
「ですだぁ〜?」
「お前ら、走る必要無いだろうが!!」
シエルが怪訝そうに声のした方を振り向くと、その方向からは、フィニ、メイリン、バルドの3人の姿が見えた。
「何した。セバスチャンなら中庭に居るぞ」
「そのセバスチャンさんについてなんですよ」
ニコニコと話すフィニに、首を傾げたシエルは、問うた。
「どういう意味だ」
「セバスチャンさんに、今までの感謝の気持ちを込めて、パーティをしようと思うのですだよ」
「まぁ、誕生日会、ってのも有りだなと思っているんだがな」
「パーティ・・・?」
(あいつがそんな人間じみた事を喜ぶのか・・・?)
シエルが嫌そうに顔を歪めた。
しかし、使用人たちはさらに欲求してきた。
「それで、シエル坊ちゃん。セバスチャンさんの誕生日、教えて欲しいんです!!」
「はぁ!?」
「セバスチャンさん、なかなか自分の事を教えてくれないのですだよ。シエル坊ちゃんなら知ってると思って」
「知るか!!というよりお前ら、持ち場はどうした!!」
シエルは憤慨し、使用人たちに怒鳴った。
「すぐ戻りますよ〜。じゃぁ、シエル坊ちゃんも知らないんですね?」
「あぁ。分かったら持ち場に戻れ」
「分かりました〜」
「ですだ」
「チッ。めんどくせぇ・・・」
「ホッホッホッ」
使用人の背中を見送り、シエルは自室に戻った。
深く椅子に座り込み、机に頭を伏せた。
(僕だって、そんな事・・・)
その時、丁度良くドアが鳴った。
「失礼します。坊ちゃん、アフタヌーンティをお持ちしました。冷めないうちに」
「あ、あぁ・・・」
シエルは、机に置かれたカップを取り、お茶を啜った。
ふ、と前を見ると、セバスチャンがこちらを見て、にこりと笑った。
「お口に合いましたか?」
「あぁ・・・上手い」
「それは良かった」
シエルは改めて思った。
(僕は、こいつの何も知らないんだな・・・)
そして、盛大なため息をした。
鳥の声が、窓から聞こえてくる・・・