純情エゴイスト

□星に願いを
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一年に一度の再開・・・・・・



夜の月が輝く窓辺に、上條は一人空を見上げていた。

星が煌き、風が頬を撫でる。

今日は7月7日、七夕だ。

特に何かがあるという訳ではないが、何処か心が揺れる。

それは、日本人なら誰でもある事だろう。



「ヒロさん、寒くないですか?」

上條はひとつ瞬きをして、後ろを振り向く。

そこには、風呂上りで髪が濡れたままの野分が微笑んでいた。

ゆっくりと上條に近づき、隣に腰掛ける。


「・・・星、綺麗ですね」

「あぁ、七夕って思うだけで、綺麗に見える」


上條は、笑いながら答えた。

それを愛しそうに眺めた野分は、あ、と何かを思い出したようで、仕事用の鞄を取る。

その中から出てきたのは、何枚かの色鮮やかな短冊だった。

「へぇ、懐かしいな」

上條はその一枚を手に取り、面白そうに眺める。


「今日、子供たちと作ったんです。ヒロさんも、何か書きませんか?」

「・・・お、俺?」


いきなりの野分の提案に、上條は少々焦りを見せる。

しかし、野分はその優しい笑みのまま続ける。



「折角の日です。織姫と彦星に願いを込めても良いでしょう?」


織姫と、彦星。


一年に一度だけ、ふたりは巡り会える。


上條は、目を伏せ短冊を見る。


まるで、あの日の俺たちの姿と被る・・・――



一年間、離れたあの日々を・・・―――








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