純情エゴイスト

□もっと傍で
1ページ/4ページ

最近、擦れ違いを感じる。



一緒に居る時間を大切にしたいだけなのに、何故か離れる。



「ヒロさん、今暇ですか?」

野分が上條に声をかける。

最近仕事で忙しかったが、久しぶりに家で顔を合わせれた。

「暇だが・・・お前、少し休んだらどうだ?」

「え・・・?」

野分はどうして、とでも言いたそうに首を傾げる。

上條は、近くにあった鏡を野分の前に突き出す。

いきなり鏡を出された野分は、不思議そうに鏡を眺める。


「お前、最近寝てないだろ。顔、ちょっとやつれてる。寝ろ」

「え、でも、久しぶりにヒロさんと話せるのに・・・」


上條は、野分の言葉に顔を紅く染める。

こいつと居ると、おれはやっぱり可笑しくなる。


「良いから・・・さっさとね」


上條が顔を背け、言葉を紡ごうとした瞬間



「・・・先輩から?「・・・教授?」」

二人のケータイが同時に鳴り響く。

嫌な予感がする。


二人、背を向け合ってそれぞれの電話に出る。

そして、同時に電話を切る。


「・・・ヒロさん、俺、今から仕事入りました。帰り、遅くなるみたいです・・・」

「・・・俺も、教授に呼ばれた」


顔を見合わせて、俯く。

また、お互いが離れる。


それから、一緒に部屋を出る。

会話が無く、ただ並んで階段を下りていく。


「それじゃ、ヒロさん、また後で。いってきます。あと、いってらっしゃい」

「あぁ、そっちも頑張れ。いってくる。んで、いってらっしゃい」

それぞれ、背を向け合ってそれぞれの仕事場に向かう。




どんな顔をして、仕事に向かってるのだろう



上條は、そんな事を考えた。


今、どんな気持ちなんだろう


野分は、そんな事を考えた。


お互いを想っているのに、どうして擦れ違う。

どうして、時間を共有できないのだろう・・・







次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ