純情エゴイスト

□大好きだから。
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(チクショー今日もかよ・・・)

上條は携帯を荒々しく閉める。

時間は夕方の時刻をさしている。

(いつもこの時間に電話かかってくんのに・・・)



最近、野分は、上條と連絡を取ろうとしない。

今までなら、上條が帰るこの時刻に、何らかしらの連絡が入る。

『もう家に着きました。』

『これから家に帰りますね。』

『もう少し掛かりそうです。すみません』


(それが、いきなり途絶えた・・・)


上條は鬱々とそんな事を考えながら家への道をただ帰る。

部屋の前まで着き、ドアノブを掴むと、


(やっぱり開いてる)


何時も以上に鈍く感じる扉の開く音。

そうすると、いつもあいつの声が聞こえる。

「あ、お帰りなさいヒロさん」

そう言って玄関を覗く野分。

いつもの情景のはずなのに・・・



(あいつの笑顔が、最近ぎこちなく感じてしまう・・・)



「あぁ、ただいま・・・」

「早かったですね。びっくりしました」

野分は、笑顔でそう言う。

上條は、目を伏せ、靴を脱ぐ。

「そうか・・・」

素っ気無く言うと、野分は、口ごもりながら言葉を続けた。

「連絡も出来なくてすみません」

「いや、大丈夫だ」


俺の言葉に安堵したのか、急ぎがちに部屋に入っていってしまう野分。

上條は、その背を見送り、目を伏せる。



(一体、何なんだよ・・・)



何かが、すれ違っている気がしてしまう・・・



それが、俺の思い過ごしであれば良い・・・








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