純情エゴイスト

□貴方がいれば・・・
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「ヒロさん!!飲みすぎです!!」

アパートの一角、野分は上條の自棄酒につき合わされていた。

「だってよぅ。マジあの教授ありえねぇ」

上條はプハァ〜と息をつきながら酒を口に運んでいる。

「だけど、そんなに飲んでも・・・」

「良いんだよ!!べーつに気にするな!!」

野分はため息をつくと、上條の回りに散らかっていたビール瓶の片付けに移る。

ゴミ箱にそれを放り込んでいると、背中に重みを感じる。

「野分〜・・・」

「・・・ヒロさん。重いです」

野分が目だけを背中のほうに移すと、上條が野分の背中に体重をかけている。

でも、上條がこんなに大胆になるのは、酒が入った時だけなので、そこは多めにみる。

「なぁ・・・お前の所、上下関係厳しい?」

「あぁ・・・軽く、ですね」

「そうか。俺なんて、全然だし。どうしようもなくて、全然駄目で・・・・」

でもヒロさんは知らない。

ヒロさんは“教授”の話をするときは、いつも笑みを浮かべている。

それに嫉妬してしまう自分が子供で嫌だ。

「あぁ、あと1つ聞いて良いか」

「何ですか?」



「お前、女抱いた事あるの?」



「ッ!!何を言って」

「だって、お前、性格良いし人に好かれ易い・・・彼女の一人二人、居たんじゃないの」

何でこの人はこんな事を聞くのだろう。

背中に上條の重みを感じながら、野分はゆっくりと口を開く。

「ヒロさんが居るのにどうして他人を抱かなきゃいけないんですか?」

そうか、と呟き、野分の背中に頭を預ける。

「でも、何でそんな事を?」

「え、ただ、お前のバイト先の前通った時、客の女の子たちと仲良さそうだったから」

ヒロさんの温度が上がったのを感じる。

「で、でも、し、嫉妬・・・とかじゃねぇ〜し」

ヒロさんは、嘘が下手だ。

「別に、お前は俺だけを見てくれてる。ってお、思ってるし・・・」

ヒロさんはやっぱり可愛い。

野分は上條に言い聞かせるように言う。




「俺は、ヒロさんさえ居れば、何もいらない」


上條がピクッと反応する。

「ヒロさんが居れば、それで良いんです」


うん、と頷く人。


強がりで、でも寂しがりやで。






そんなヒロさんが好きだ・・・―――






〜END〜
 

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