黒執事
□黒き薔薇 我が手の中に
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日の光が眩しいある朝。
ファントムハイヴ家執事、セバスチャンは、いつもの様に小さな主人を起こしに行っていた。
「坊ちゃん、朝ですよ」
「う…ん…分かってる…」
主人のシエルは、重たい身体を起こした。セバスチャンは、おや、と声を上げた。
「昨日は良く眠れなかったようですね?身体がだるそうです」
「…あぁ。考え事を…してたんだ」
なぜか顔を赤くするシエルに、セバスチャンは首を傾げ、問うた。
「何か、悩み事でも?」
「いや、その…」
シエルは俯きかげんになっていた顔を上げ、セバスチャンを見た。
「お、お前には、、その…」
「何でしょうか?坊ちゃん」
セバスチャンがシエルのベットの方に歩を進めると、シエルは顔を背け、小さくて、弱弱しい声で言った。
「お前には、誕生日はあるのか」
突然の事だった…
セバスチャンは目を見開き、固まった。
(朝から、主人は何を言いたいのだろう…―――)
またしても首を傾げるセバスチャンに対し、シエルはベットの中で手を握り締めていた。
(本当に僕は、どうしてしまったんだろう…)
これが、『ハジマリ』である事に、気がつく者は誰一人としていなかった。