贈り物の部屋

□皐 パンチ様へ
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     信愛〜Too,Love〜




「・・・ヒロさん?どうしたんですか?」

夜も更けてきた頃、野分は、病院の残りの書類を家で片付けていた。

その時、不機嫌そうな上條と目が合ったのだ。


上條は、「別に・・・」と顔を背ける。

野分は、不思議そうに首を傾げて、上條に問うた。


「どうかしましたか?」

「いや、特に何も無い・・・」

上條は、手に持っていたクッションに顔を深く埋めた。

野分は、席を立ち、上條の座っているソファの隣にゆっくり腰を下ろす。

上條は、クッションの間から、目だけを覗かせこちらを見る。


「・・・な、何だよ」

「ヒロさん、何か機嫌悪そう・・・」

「っ!!」


上條は目を見開き、視線を野分から外す。

そして、耳まで朱色に染めながら、上條は声を大にして言う。




「だって、野分、家でも構ってくれないし」





つかの間の沈黙・・・―――


「黙んな!!ボケっっ!!!」

「え、いや、ヒロさんって、そんなに甘えんぼさんでしたっけ?」

「っ!!知るか〜!!!でも、今日は何か構ってほしかったんだっっ」


上條は、恥かしそうに顔を伏せる。

野分は、驚いたように上條の顔を見る。

いつまでも見つめてくる野分の瞳に、上條はさらに瞳までも潤ませて野分に怒号を浴びせる。


「俺だって、ずっとお前と話してたい時があるんだよ!!!」


次の瞬間―――


野分は、上條の身体を抱きすくめた。

上條はクッションを掴んだまま、頭を野分の胸に預ける。


「そう言ってくれれば、いつだって俺はヒロさんと居るのに・・・」

「だ、だって仕事だろっ俺の仕事中は、お前何も言わないから・・・」

「・・・っ、でも、ヒロさんが我慢する事は無いですよ?」

「ど、どうして・・・?」


上條は、少し上の位置にある野分の顔を上目目線で見上げる。

野分は、優しい柔らかい笑みを上條に向ける。





「俺の世界は、ヒロさん中心だから」





「んなっそ、そんなの変だろっっ!!!」

「良いんです。俺が許します」


野分は、そのまま上條の顎に恭しく手を沿え、そのまま唇を重ねる。

上條は、野分の深い愛が詰め込まれたその口付けを、ただ受け入れる。



さらに深く重なる唇は、まるで二人の距離のようで・・・



「・・・ぁ、はぁっ・・・っの、野分・・・」

「何ですか?ヒロさん」


上條は、口付けて甘く蕩け、濡れた唇で言葉を紡ぐ。




「好き・・・野分が、好きだ・・・」




上條のいつにも無く甘えた声。

野分の耳に、心地良く、ちょっと擽ったく響き渡る・・・―――



それが、野分の最高の瞬間「とき」。







〜END〜
 

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