大切な頂き物
□皐パンチ様より
1ページ/1ページ
『青色シャツ』
休日が重なったある日のコト。
野分が服を買いたいと言うので付き合ってやることにした。
なのに…。
「ヒロさん、この色絶対ヒロさん似合います。」
「こういう柄のシャツはヒロさん着こなせますね」
「ヒロさん、ピンクも可愛いと思います。」
…バカかこいつは。
「おいっ野分。」
流石に俺は堪忍袋がはちきれた。
「何ですか?ヒロさん。」
「お前の服を見たいっつーから付き合ってやってんのに、お前は何で俺の服選んでんだよっ」
「すみません。ついヒロさんの物にばかり目が行ってしまって。」
…バカだこいつ。
呆れて閉口してる俺を見て野分も困ったようだったが、一転
「じゃあ何か見立てて下さい。」
と言い出した。
え…っ。そう来たかこいつ。
まぁ、もう長いこと一緒に居るから、コイツに似合いそうな物は分かるつもりだが…。
というより、野分は客観的に見ると、背が高く、男前だ。多分、手入れして青山辺り歩かせればモデルだと思われるだろう。
そんな事を考えてたら
何だか胸がドキドキしてしまった。
そんな俺を察してか
「どうしました?」
野分が俺の顔を覗き込んで来た。
「近ぇんだよっ。」
カァッと耳まで赤くなるのが分かる。
気付かれたくないから
ぐるり反転し、その辺にあるTシャツを物色してる振りをする。
「ほらこの柄なんか良いんじゃねぇか?!」と掴んだTシャツには
セントバーナードのイラストが描いてあった。
「はいっ。じゃあそれにします。」
おいおいマジかよ…。
その上ヤツは
「これ、色違いもありますよ。ああ、この色ヒロさんに似合いそうです。」
と又俺のをチョイスしだした。
「俺のはいいからっ。さっさと買えよっ。」
と俺はそこから離れた。
野分は本当にバカだ。
プライベートだと俺の事ばかりになってしまう。
だけど
本音を言えば…
凄く嬉しい。
俺の事をこんなに想ってくれる…。
その時、
凄く綺麗な青色のシャツが目に留まった。
「これ…野分に似合いそうだ…。」
俺はそれをもってレジへ並んでしまった。
帰宅後。
「ヒロさん、これ…」と何やら渡して来た。中を開けるとさっきのセントバーナードTシャツが俺が選んだのと色違いで入っていた。
「バカ。お前これ俺が着んのかよっ」
「お揃いで着ましょう。」
…こういう事をしたがるヤツなんだよな…。
「有り得ない。」
「ヒロさんはインナーとして下されば良いんで…。駄目ですか…?」
あの何時もの上目遣いで言われて…。
狡いぞ野分。
「しょーがねぇ。肌着代わりにしてやるよ。」
「有難うございます。」
言わさせられた。
そんでもって
「野分、やるよ。」
とさっきの青色のシャツを渡すと
「え…?ヒロさん?」と恐る恐る袋を開けてから
アイツは凄く喜んであのクタクタの笑顔になった。
「ヒロさん。俺嬉しいです!大切に着ます。」
ぎゅうっと抱き締めて来たから。
何だか俺も嬉しくなって。
野分の背中に腕を回したんだ。
おわり