純情エゴイスト
□隠し事。
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野分の状況説明が終わり、二人の間には微妙な空気が流れ始める。
野分は、横に座っている上條の様子を伺う。
すると案の定、顔を真っ赤にして俯いているのが分かる。
「あ、あのヒロさ「うっさい!!!」」
あの、台詞被ってますけど・・・
そんな野分のツッコミにもお構いなく、上條の言葉は収まらない。
「た、確かに俺も悪い!!だがな!!勝手にパソコン弄って変なバグ起こして、ブログを見るとは、良い度胸してんな!!!!」
「ス、スミマセン・・・でもヒロさん・・・」
「何だよ!!」
「教授と宇佐見さんの事書き過ぎです・・・」
その言葉を聴いて、上條は息を呑んだ。
上條は、どう言葉をかけるか1人思案していると、野分から声をかけられた。
「確かに、教授や宇佐見さんへの愚痴は何回か聞かされてました。でも、俺の聞いた事の無い本音ばかり書かれてて・・・」
「そ、それは・・・」
「俺とヒロさんは、4つ離れてます。その距離のせいですか?」
「ち、違う!!」
上條は勢い良く頭を横に振る。
野分は、問い詰めるような目線で上條に向く。
「じゃぁ、どうして?」
「だ、だって・・・」
上條は顔を歪め、野分を見る。
「お前にだけは、心配して欲しくなかった」
「ヒロさん?」
「だって、何時も俺が愚痴を言うと、お前、自分の事の様に心配してくれて・・・俺は、お前から愚痴をあんまり聞かないのに、それは無いだろうと思って・・・」
じゃぁ・・・
野分は、頭を働かせる。
「ヒロさんのブログは、俺の為・・・?」
「っ!!!!わ、悪かったな!!どうせ、俺はこんな事しか出来ないんだよ!!!」
上條は、野分に背を向け身を縮める。
野分は、驚きの表情で上條の背を見つめる。
(俺の為だったんだ・・・)
「んだ!!の、野分!!いきなり抱きつくな!!」
「ヒロさん、ありがとございます」
野分は、上條を抱く腕に力を込める。
「でもこれからは、ヒロさんの思い、全部俺に聞かせてください」
上條の頭が、ゆっくり前に落ちる。
野分は、自分がさらに上條に近くなったと思った・・・
「でも、ヒロさん」
「な、なんだよ・・・」
「俺の事も、どんどん言っちゃって下さい♪可愛い事書いてくれてて嬉しかったです」
「んなっ!!!!ば、バカ野分ぃぃい!!!!」
それから数日後、そのブログはいつの間にか姿を消した。
と、共に・・・
「ったく、何なんだよあの教授!!!!」
「ヒ、ヒロさん落ち着いて!!」
野分への上條の愚痴もエスカレートしたのだった・・・―――
〜END〜