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□感謝
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ボムの騒ぎに加え、三男と七男の言い合いまで始まって益々煩くなったのを余所に、
隅では相変わらず静かな攻防が繰り広げられていた。
「お主らわしに逆らうとはいただけんのぅ」
「威嚇なさっても駄目なものは駄目ったら駄目で駄目なんです」
「最近お腹出たの知ってますからね、隠しても無駄です」
「気のせいじゃて」
「気のせいじゃありません」
「ベルトの穴一個ずらしたの知ってるんですよ」
「厚着しとるんじゃよ」
逃れ宥めすかし食い下がるワイリーに、とうとうメタルマンが溜め息を吐いた。
膝をついて視線をあわせる。
「……お願いです、どうかお身体を大切になさって下さい。もうお休み下さい。
 昨夜もまた衛星軌道の計算に徹夜していらしたでしょう、どうか、ご自愛下さい」
メタルマンのどこか辛そうな声に、ワイリーがぐ、とつまった。
ただ健康のためにとあれこれ言われるだけなら普段からそうなのでのらりくらりと
かわすのが常なのだが、こうも懇願するように、しかも昨夜ついつい研究に気分が
のって徹夜したことまでばれているとは、ワイリーは思っていなかった。
そんなワイリーに、追い打ちのようにフラッシュマンが空いている片手を傍にあった
膝掛にのばし、ばさりと背中に掛ける。
ふかふかと肌ざわりのよいそれは暖房器具の傍にあったためすでにぬくもっており、
ワイリーは酒で暑くなっているにもかかわらず程よい暖かさに包まれてそれを心地よく感じた。
そして正直あまり酒に強くないということも相まって、目蓋が急に重くなった感に襲われる。
酒ではなく、眠気でくらりと視界が回った。
「────っ……!」
そのタイミングを狙ったように、フラッシュマンが言葉を重ねる。
「ほら、眠いでしょう、本当は疲れてんでしょう博士? 無理しないで下さい」
「……全く、折角のお前たちの誕生日だというのに。お節介というか心配性というか。適わんな」
言いながら、困ったように笑ってワイリーは白旗をあげる。とられた手が、ひらひらと
降参の意をあらわした。
「わかったわい、困った奴らじゃ。罰として部屋まで運んでもらおうかのぅ。
 あっちのあやつらの始末も任せる。……お言葉に甘えて、じゃあわしゃ寝るぞ」
「仰せのままに」
「寝ちゃって下さい博士」
「……最初に言ったがな、もう一度言うぞ。おめでとうお前たち。ありがとうな」
ゆったりクッションに身を預けるワイリーに、嬉しそうにメタルマンは笑い、
フラッシュマンはやれやれと表情を緩めた。
ワイリーが観念して、どこか幸せそうに体から力を抜いて、目蓋を閉じる。
さっきまでだだをこねてたにも関わらずやはり疲れていたのだろう、すぐに眠りにおちていった。



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