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□感謝
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ふわりと降り注ぐ冷たい雪。
かざした手にそれが音もなく触れると、すぐに姿をかえて伝い流れる。
そしてあっという間に離れていった。








「いい加減にして下さい博士」
「少しばかり良かろうて」
「少しばかりと仰っても回数が多ければそれは少しではありません」
「まぁそう堅苦しいことを言うでない」
「誤魔化そうったってそうはいきません」
「だめったらダメったら駄目です」
「もう少しじゃよ、もう少し」
「いけません」
「けちくさいのう」
「何とでも。ていうか駄目っつってんでしょうが」



「うわぁ、何アレ珍しい」
「飲酒量制限」
ヒートマンがぽかんと呟いた言葉に、ゆったりとソファに機体を沈めるバブルマンが答えた。
少し驚きに固まっているヒートマンを余所に、バブルマンはのんびりとワインを傾ける。
傍には空のボトルが数本転がっていた。
そのボトル群の向こうには酔っぱらってボムを投げあって遊んでいるクラッシュマンと
クイックマンの姿があり、それを止めにというか激昂して折檻に入ろうとする
エアーマンと、どうしたらいいのかとおろおろしているウッドマンがいる。
───今日はクリスマス・イヴ。
そしてメタルマンをはじめとしてウッドマンまでのナンバーズの製作記念日でも
あるため、祝いの催しがワイリー基地にて開かれていた。
しかし、そんな賑やかで物騒な騒ぎの隅。
ヒートマンが不思議そうなコメントをした先。
ボムが爆発しそうだとか馬鹿がバカやってるだとかどこ吹く風、全く空気の違う、
しかしこちらも和やかでない一角があった。
我らが父、ワイリーが、長兄機と六兄機に囲まれて───というか拘束されている。
ワイリーの右手を深紅の手が、左手を白い手が掴んでいた。
メタルマンとフラッシュマンが、ワイリーに厳しい顔をして突っ込みを入れまくっている。
普段長兄が父に食事や飲酒についての苦言を零すことはままあれど、それに六兄まで
加わっているのがヒートマンには何とも新鮮に感じられた。
しかしそれでもワイリーの手は虚しくワインにアピールしている。
確かにワイリーの顔は真っ赤に染まり、そろそろ止めたほうがと言う感じではあった。
しかし、そんなに言う程だろうか、とヒートマンは思う。
ヒートマンはやれやれとソファの背にもたれかけた。
「僕らの誕生日じゃん、折角祝ってくれてんのに少しくらいいーんじゃないの、
 てか僕だって飲みたいのにさぁ、さっきエアーに取り上げられてさぁ」
「お前は酔うとキス魔になるからだめ」
「またまたバブルまでそんなことー、フラッシュと同じこというんだから!
 エアーは理由言ってくんなかったけど、僕そんなキモいことしないもんねーだ、
 失礼しちゃうね!」
「記憶がないって幸せだねー」
「しーてーまーせーんー!!」
「ふぅん、ならフラッシュからメモリ落としてもらいなよ。ダイレクトで見てきてもいいよ」
「どーせ捏造でしょ、そんな手に引っ掛からないよーだ」
「そんなことわざわざ捏造すると思う? てか捏造したと仮定してどんな趣味ソレ」
「してないったらしてないってば!」



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