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□競争
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「あーあーあー、壁削る馬鹿があっかよてめえ」
「お前の場所まで一息に行くには一回でジャンプするには遠くて無理だったし、
 何回かジャンプしてればそれが見つかってバスターの餌食になるだろ、しかも
 それが空中だったら格好の餌食で逃げれん。で、すぐに行ける手段がそれしか
 なかった。長引かせるとお前は厄介だからな」
「そりゃ光栄ですこと、クソッタレ。その代わりお叱り食らうじゃねーかよ。経費がかさむってな」
トレーニングルームの壁を不機嫌そうに撫でるフラッシュマンを、床に座っている
クラッシュマンはのほほんと見上げた。その様子に、「戦闘のパターンにだけはオツム
回りやがって」とフラッシュマンがぶつぶつと零す。
「まぁそう怒るな弟、何でそんなに機嫌が悪い」
「チッ、ビンボー呼ばわりの挙げ句に負けりゃ機嫌悪くもならあな。誰かさんが壁も壊しちまうし」
「別にビンボー呼ばわりなんてしてないぞ」
「同じだっつーの馬鹿野郎、大体何でんなこと言われなあかんのだ」
「いや、お前デジカメ使うの勿体ぶってる気がして」
ぶつぶつと愚痴の止まないフラッシュマンにクラッシュマンが理由を告げると、
フラッシュマンは訝しげに兄を見やった。
「あ? デジカメ? 普通に使ってますけど?」
「けど古い型のカメラもよく使ってる。使い捨てっつったか? あれ。だから、
 高いものを使うのが苦手なのかと」
「真面目に殺されてーのかてめえ」
「だってさ、俺等撮るときとか、あと風景の時も、デジカメ使う時もあるけど
 地味に使い捨て使ったりしてるだろ? だから不思議に思った」
クラッシュマンの言葉に、フラッシュマンはああ、と思い当たったように声を上げ、
かしりとE缶の蓋を開ける。
「あー、そりゃま単純に画素数が違うからな」
「へえ?」
フラッシュマンの説明に、クラッシュマンは意外そうに首を傾げた。不思議そうな
兄を横目に、フラッシュマンは構わずE缶を傾ける。
「カメラの画素数はデジタルがアナログに追い付いてねーんだよ。綺麗に撮りたきゃ
 断然アナログだな。ただ、修正がきかねーからデメリットも多いがな」
だから勿体ぶってるわけでも買い替えケチってるわけでもねえ馬鹿野郎。
ずー、とE缶を最後まで啜り、フラッシュマンが眉間に皺を寄せた。
そんな弟の声を余所にふんふんと感じ入ったように頷いて、クラッシュマンは
じゃあ、と青い色を仰ぐ。
「そうか、じゃあそのがなんとかはそのうち追い付くのか?」
「そういうこと。てか画素数くらい覚えろ戦闘馬鹿のハト頭」
「さっきから馬鹿だのハトだの、違うぞハゲ。で、いつ頃追い付くんだそれって?」
「喧しい大馬鹿野郎。今んとこ四、五年ってとこらしいが、さてどーだかな」
「ふーん」
「何だよ」
どこかうきうきとした声を出すクラッシュマンに、フラッシュマンはどうしたのかと
片眉をあげた。

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