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□信号4
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信号3の続き
・破損、破壊描写あり
・オリジナルの悪役出現




信号4




部屋を満たす、焦げ臭い匂い。窓のないそこには換気設備が働いているはずだが、
部屋中央に横たわっている───拘束されている───ロボットから立ち上る
それに、換気機能が追い付いていないらしい。
鼻孔を刺激するつんとした独特の匂いが、白い白い日の差し込まない無機質な
空間に立ちこめていた。
かつり、束の間静まっていた部屋に、堅い足音が響く。
ふ、と息が零れた。
「やれやれ、君も強情だね」
白衣を纏う男が、聞き分けのない子どもに語り掛けるように口を開く。
ぽつんと落とされたそれは、音量の割によく響いた。
男の目の前には、台に縫い付けられている機体がびく、びく、と不自然に痙攣している。
機体に残る電流のせいで反応出来ないでいるその機体を眺め、男は機体の黄色い腹部に
そっと手を置いた。熱を持ち熱くなっているそこは、しかし崩落に巻き込まれて
破れた部位を除いては焦げすらしないで、未だ破損に至っていないことを男に知らせる。
感心したように男が呟いた。
「それにしてもワイリーナンバーズというのは頑丈にできている」
電流に強ばったままだった機体───フラッシュマンから一拍おいて漸く力が抜け、
くたりと台に沈み込む。はくはくと、声を返そうとしたのか束の間口を開いた。
しかしそこからは、カハッ、と擦れた排気だけが零れる。
次いで、ざらつきながらもやっとのことで声が出た。
「……壊してえならとっととやれよっつってんだよ、何回言や分かんだ、この
 変態サディスト野郎」
「いや、壊すつもりはないが、一般用のロボットが壊れてしまう程度では君たちには
 効かないだろう? だが、じゃあ正直どの程度なら君たちにも効くのかという
 加減が、どうにも分からなくてね」
しかし声を出すのに時間がかかったね、では、今のは少々やりすぎてしまったのかな?
顎に手を当て、白衣の男が考え込む。
「まぁ、君にすることは君からデータを引き出すための駆け引きと同時に、君自身の
 データを取るためのテストをしていると思ってくれていい」
「……おやおや、馬鹿正直なことで」
擦れた、どこか不機嫌そうな声に男は不思議そうに視線をフラッシュマンに向けた。
「? 気に入らないかな?」
「気に入るわけねぇだろ、痛いの嫌いなんだよ、拷問される趣味はねえ」
当然のことを何を言うのだ。そう思いながら、ケッ、とフラッシュマンが吐き捨てる。
本当に頭がおかしいのかと声に出さず続けた。




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