Main2

□余暇
2ページ/5ページ




「分かりやすいっちゃ分かりやすいんだけど、考えてみればぶっちゃけ妙な光景だよねー」
「へ、そうか?」
「や、これ本人も言ってたんだけどね、何ていうか、似合わないっていうかさー」
「何がだい?」
ヒートマンとクラッシュマンがだらだら喋っていたその場に、ふとメタルマンの声が交じった。
見やると、おやつの準備をしていたらしい、クッキーをのせた盆を持って長兄が立っている。
「お帰りクラッシュ、ヒート」
「ただいま。あ、報告はこのファイルな」
「ん、はーい、受信しました。あとで確認するねー。お疲れ」
「メタルただいまー、ねえ、それ何クッキー?」
「博士がまたここの所寝て下さらなくて目もお疲れみたいだからチョコチップと
 ブルーベリーソースの二種類だよ。これはお前たちの分だから、全部食べていいからねー」
「わ、やったね!」
嬉しそうに、クラッシュマンがハンド形態にシフトさせヒートマンとクッキーに手を伸ばした。
きゃいきゃい喜ぶ五男と七男をよそに、ちょこんとソファに座ったまま動かないのを
不思議に思い、メタルマンがにっこりと末弟に微笑みかける。
「あ、ウッドの分もあるから、ね"!?」
しかし、ソファの背の向こうを覗き込むように視線をやったところで、最後に
声が不自然な音を形作った。
「!?」
それに少し驚き、きょとんと不思議そうな顔をするウッドマンを見つめ、メタルマンが
わなわなと震える。───それでいてクッキーはちゃんとソファ前にあるテーブルに
置くあたり、彼の器用さが変に際立っていた。
メタルマンの視界に、よくその辺でだらだらと転がりはするが普段めったに甘えて
くれない、素直じゃない挙げ句に生まれ持った器用さと面倒見の良さで世話も中々
させてくれない六番目の弟機体が、あろうことか末弟の腕を抱え込むようにして
安らかに眠っている姿が映り込んでいた。
目の前の光景に、感極まったように悲鳴を上げる。
「わ、わ、何これ、何この光景! お兄ちゃんちょっとカメラ取って……」
「へ?」
しかし、それを遮るようにクラッシュマンが疑問の声を発した。次いで、クッキーを
頬張りながらヒートマンが長兄を見上げる。
「え、メタル知らなかったの?」
「ぁ、え?」
ぱちりと目を瞬くメタルマンに、眠るフラッシュマンにぴ、と指を差し、ヒートマンが
クッキーを飲み込んで告げた。
「これ、寝てるときにこうやって抱きつくの、フラッシュの疲れたときの癖だよ。
 えーっと、たまご、型? とかなんとかってのだって。たまにしかないけど、
 別に特に珍しい光景ってわけでもな」
「ええええええ!? ちょっと何その可愛い癖!? お兄ちゃん知らないよ!?」
説明を遮って、メタルマンが驚きのあまり絶叫する。キィイン、と響くそのナンバーズの
なかでも高めの長兄の声は、その場にいる全員の聴覚器を貫いた。
片方のそれを押さえ、「うっわ痛い、聴覚器が超痛い」と言いながらまたクッキーを摘む。




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ