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□余暇
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まだ強い日差しにうだるような暑さ、妙にのったりと湿り気を帯びた空気に、
しかし影の傾く速度は静かに早さを増していた。
吹く風は徐々に涼やかさを感じさせ、日が陰った途端に乾き始めるそれに、季節が
移ろいを微かに醸しだす。
広間の大窓から自身が世話をする森や空を眺めていたウッドマンは、ゆったりと
ソファに機体をもたせかけた。
真っ青な空に、遠くにもくもくと白い雲が見える。
いい天気だ。
そう思いながら、手に持っていた布を畳んでテーブルに置く。
すると、するり、と腕が伸びてきた。



余暇



「あれ、ひっさしぶりな光景」
広間に、呑気な声が聞こえた。
ドアから飛んできた声にウッドマンが振り返ると、任務から帰還してきたらしい、
クラッシュマンとヒートマンが広間に入ってきた。
「あ、ヒート兄ちゃんにクラッシュ兄ちゃん、お帰りなさい」
「ただいまウッド、ねえクラッシュ、何が久しぶりなの?」
「ほら、あれ」
「ん? 何? …あ、あーね、なるほど」
末弟と五兄の会話にこくびを傾げていたヒートマンに、クラッシュマンがドリルで
ソファを指し示す。それに従ってソファの背から覗き込んだヒートマンは、見えた
光景に納得がいったらしく、確かに久しぶりだね、と呟いた。クラッシュマンも
背もたれに両肘をついて覗き込む。
三機体が視線を向ける先、数人がけ用のソファの大半を寝転がることで陣取っている
存在───フラッシュマン───が、ウッドマンの腕を抱え込むようにして眠っていた。
「あー疲れてんだねー」
「みたいだなー」
「ていうか、フラッシュが基地にいるのがまず久しぶりだよねぇ」
言いながら、ヒートマンが腕をのばして眠っているフラッシュマンの頬をふにふにとつつく。
ぴくりとも動かない。
「さっき僕が森から帰ってきた時にはもうフラッシュ兄ちゃんここで寝てたよ。
 錆びもオイルもそのままだったから軽く機体拭いてあげてたんだけど、ちょっと
座ったら捕まっちゃった」
えへへ、と少し照れ臭そうな、しかし嬉しそうな様子でウッドマンはこりこりと頬を掻いた。

フラッシュマンは、数週前からエアーマンとの遠征任務についていた。
近々大規模な襲撃をかける発電所の視察と、そことは別地点での資材調達だ。
二つとも遠距離の地に赴く任務であったが、内容を考慮して長くかかると見ていた
その任務自体が、季節の変わり目での悪天候故に、更に長引いた。
しかもフラッシュマンは任務後にワイリー基地には帰らず、そのままエアーマンの基地に
ついていき、空輸を司る部下たちへ任務の礼だとメンテナンスも序でにしてきたのだ。
そして漸く帰還し、主の不在を広間で待とうとして、しかし負荷に耐えかねた
プロセッサが強制ダウンを施行し────今に至る。




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