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□vert
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自分達の先に居たことは知っていた。
かつて、といってもそう遠くない頃。父に造られ、戦い、負け、父と共に居た機体。
そう、居た、だ。
過去の話だ。過去形だ。
なのに記録上にだけ残っているだけだった筈の存在が、父が巧妙に守り続けた端末、
デジタル内にプログラムの形で保存されていたというのを知ったのは最近のことだった。
後続機の自分達にすら気付かせぬまま、誰にも気付かせず大切に隠していたらしい。
否、それはまだいい。
それは別に構わない。
機械の自分達を息子と呼び愛を注ぐ父のことだ、同じく息子と呼んだだろう存在に
対する愛着があったとておかしくない、充分に理解が及ぶ行動だ。
それは特に何の問題もない。
しかし、自分達が何も知らなかった頃、そのプログラム達が時折ラボのシステムに
侵入し隠れてこそこそと自分達を見ていただなんてことまで知ってしまえば、
気分がいいわけがない。
父が三度目の敗北を喫したあと、その過去の遺物らが機体を得て歩き回り始めた
など、おもしろいわけがない。
挙げ句に自分たち相手に先輩面だと? ふざけるな。
見て取れる父の寵愛に、故に表向きはへり下ろう。だが内心は自分の勝手だ。
そこまで強要される筋合いはないし、そもそも気に入れと言われたわけではないのだ。

気に入らない。

それがスネークマンによる先のナンバーズ、セカンズへの第一印象だった。



vert



「マグネットくん、すまないが博士が腰の痛みを訴えておられたんだ、何かいいものはないか?」
「んー、まぁた腰かぁ…そーっすね、この会社の湿布はなかなかいいと思うんすけど」
メタルさんはどう思います?
のんびりと首を傾げ、にっこりと笑う自分達の長兄機体の気配を背後に感じながら、
スネークマンは内心舌を打った。
兄より深い赤みを湛える、兄によく似た旧型機体、メタルマンが自分達のエリアに
尋ねてきたからだ。「俺には分からないよ、だから聞いているんじゃないか」と
困った顔で言う深紅は、後続機の自分達の性能性格、趣味嗜好まで把握していることが伺える。
でなければ、マッサージが趣味の兄にこんなことを聞きにきやしないだろう。
そのことに、スネークマンは回路の中で舌を打った。
そんなことは露知らず、またいつのまにやら熟知されていることを気にもせず、
磁力を操る兄は困り顔の旧型機と楽しそうに笑っている。
顔をあわせて以降のものではなく、自分達の姿を勝手に見られ知られていたのだと
いうことを、しかし自分以外があまり気にしていないこともスネークマンは腹立たしかった。
それどころか、個体差はあれど、他の兄弟はそれなりに先のナンバーズと仲良くやっている。
考えられない。スネークマンは微動だにせぬまま微かため息を吐いた。

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