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□necessaire inutile
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(あー面倒臭え……)


先程までのメモリを思い返しながら、フラッシュマンは小さなそれを眺めていた
アイセンサーを一度閉じる。
目を開いても当然まだいるそれは、今や自分と繋がり視覚を始め感覚を共にしていた。
しかし愚痴や溜め息を吐いたりしたところで仕方ない。
そう観念して小さな機体からコードを引き抜く。有線のまま動かすのでは、テストは
おろか使える使えないどころの話ではない。銀のプレートの上の自分を歩かせながら、
フラッシュマンは視界に展開されている小さな画面を眺めた。小さな自分の視点映像だ。
長兄が容量はそれなりと称しただけあって、軽い程度のハックはできそうだと
フラッシュマンは思う。ただし、慣れていないせいか容量の割にこちらへの負荷が妙に大きい。
慣れろってことかね。そう思いながらフラッシュマンが頬杖をついた。
「どう、フラッシュ、動いた感じは?」
「小人になったみたーい。としか言えねーんだけど?」
そっくり同じ表情で見上げる大小の青に、メタルマンはあははと笑った。
モニタに次々更新され表示される小さな機体の情報や、フラッシュマン本体への
影響情報をグラフ化し纏める。
「まぁそんなもんだしねー。じゃあ引き続き動作と映像、及び触覚検査ね」
「へいへい、なにすりゃいーんだ。さっさとやれ」
「こんぺいとうを探して下さい」
「………………は?」
「だから、こんぺいとう。白とかピンクとかの小さな粒の砂糖でできた」
「だれが金平糖の説明を求めた。何でそんなもんだって聞いてんだ」
「可愛いじゃない」
きょとんと速答するメタルマンに、フラッシュマンの頬が釣り上がった。
機体が重いのも感じさせない動きで、カシャカシャと右手を武器に変更させる。
「よーしいい度胸だ、そこになおれ」
「や、色とか大きさとか触感とかテストに丁度いいと思って!!」
だからバスターおろして!
慌てて言うメタルマンに、フラッシュマンは胡散臭そうに見やりながら少し黙った。
いちいち何かしら気に障ると思いながら、それでも仕方無しに小さな自分を走らせる。
そう遠くに散在はしていないだろう、小さな砂糖菓子を探し始めた。さっさと
終わらせたいことこの上ない。そうフラッシュマンは回路の中で毒づいた。
プレートのつるつるとしたそこから台に降り、モニタの周りをうろつく。廃熱用
ファンの傍を通ると、酷く熱かった。小さな機体の受ける熱はリンクしている以上
本体にも感じられ、熱さに微か目を細める。モニタに出ているだろうが、フラッシュマンは
一応声に出した。
「感覚良好、あっつー」
「潜入用だから、色んなことに敏感じゃなきゃと思って」
「分かってるよ、っと、一個みっけ」
コードが何本かたぐまる隅に薄いピンク色のそれを見付け、小さな機体が手に取る。
とことことそれを銀のプレートに運びながら、ちらりと長兄を伺い見た。
「おい、何個あんだこれ?」
「内緒。見つけられるだけでいーよ、最初だからね」
「かえって面倒臭いぞそれ。あ、プレートの把手の下にあるんでやんの。二個目みっけ」
そうこうしながら、五粒目をプレートに乗せたところで、メタルマンがぱちぱちと
手をたたいた。白、桜色、青、緑、黄色の五色の金平糖がプレートにちょこんと存在している。
「わぁ、すごい、最初なのに全部見つけたねー!」
ご褒美ーと言いながら、本体の口に青い金平糖を放り込む。

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