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□necessaire inutile
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「博士がいうんならまぁいいとして、だからって何でここまでディテールに拘りますか。
 そもそも、おれらの外見を模す理由が弱すぎる。番号でも振っときゃいいだろーが」
「その辺はお兄ちゃんの愛」
「気持ち悪い。心底気持ち悪い」
「そんなぁあ…!」
「もう一つ」
「へ?」
溜め息を吐いて言うフラッシュマンが、苛々と、何より気に入らないと言わんばかりに
メタルマンを見下ろしながら吐き捨てた。
「何で起動させてあんのが、よりによって俺のミニチュアなんだ?」
「ん? ああ」
フラッシュマンの指摘に、メタルマンはそうそうと自分そっくりのミニチュアを
台に戻し、オートに設定しているためちょこんとこちらを見上げていたフラッシュマンの
ミニチュアを指で撫でた。くにくにと触れるそれを受けて、小さな六男は少し慌てる。
赤い指先に触れる小さな小さなアシンメトリーの手が、控えめにそれを押し返そうとしていた。
可愛いなぁ、とメタルマンが幸せそうに目を細める。
「いやね、そのことでちょうどお前を呼ぼうと思ってたんだよフラッシュ。
 これまだ試作だって言ったじゃん? リンクしての動作確認テストをしたかったん
 だけどさ、それの被験体をお前に頼みたいんだ」
「何で俺がって言いてえとこだが、まあその選出にゃ不本意ながら適してっとは思う。
 だがな、その役は俺じゃなくててめーでもいーだろ」
「でもデータ取って博士にご報告しなきゃ」
「データ取る役を俺によこせ」
「そう言わないで。この手のことはお前のほうが向いてるって分かってるじゃない」
ね? と笑うメタルマンに、フラッシュマンは「単純にやりたくない」と零しながら、
それでも観念したのか椅子へと腰掛けた。
父が噛んでいる以上、協力しないわけにはいかないからだ。
いい子、と頭を撫でようとするメタルマンの手は、しかしフラッシュマンは全力で払い除けた。
「いたぁい……」
「撫でようとすっからだよ」
悲しそうに言うメタルマンに、フラッシュマンは不機嫌に鼻を鳴らす。
しかしふとあることに思い至り、首をめぐらせて長兄に声をかけた。
「なぁ、おい?」
一つ聞きてーんだけど、と呟く六男に、叩かれた手を擦っていたメタルマンが視線を向ける。
「ん? なーに?」
「こんなちっせーと俺自体は入れねーだろ。どの程度だ、このちびの容量は」
「ん、確かに全部は無理だけど、小さく見えて実はそれなりに容量はあるんだ。
 武器全般は未搭載でやるしかないんだけど、まあこの子たちは基本潜入用だからね。
 それはいいとして、その分ハック特化仕様にしたつもり」
かちかちとコードを繋げながら、メタルマンが小さな機体についての説明を口にした。
フラッシュマンの頸部から一本リンク用のコードを引き出し、ミニチュアに挿入しながら
メタルマンがうーん、と首を傾げる。
「お前なら、そうだね、六分の一以下程度は入れるんじゃないかな?」
「へえ、言うじゃねーの。本体への影響は」
「試作だから今回は特に重いかもだけど、負荷軽減の努力に努めるよ」
「駆動率その他が落ちるってわけか」
「まぁそこも含めて検査ってことで」
長兄の説明に了解、と返し、フラッシュマンは不本意ながらもリンクを開始した。
「あ、声も出せるんだよ、この子ー」
「使わんわそんな機能」
げんなりとフラッシュマンが吐き捨てた。

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