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□最近
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データではすでにインプットされていた。
だから、いつから知っているのかと問われれば、稼働したその日から、ということになる。
性格や言葉遣いといったパーソナルデータは知らないが、姿形と戦闘スタイルは知っていた。
本当に会って全てを見知ったのは、もっとずっと後になってからだった。




最近




いい天気だ。
風も優しく、穏やかに雲を動かしている。
眠るのにはちょうどいい晴れたある日の午後。
ハードマンは日当たりのよいとある丘の上に寝転んでいた。
辺りには他に誰もおらず、濃紺の大柄な機体を、ただぽつんと横たえている。
基地の敷地内ではあるが建物からは距離があるためあまり知られていない、
または意識されていないその場所はそのため人気がなく、ハードマンが好んで
サボりに使う場所だった。
部下の采配や基地内部の点検、調整といった、いちいち自分がしなければならない
意味が未だに分からないかったるい雑務から逃れてきた彼は、今まさにここで
サボっているのである。
こうしてぐだぐだとさぼる時間を、彼は殊の外好んでいた。
日差しがほんのりと強まり、程よい眠気を誘う穏やかな陽気の中ハードマンは思う。
二人いる創造主の片方がもう一人に三度目だという挑戦をして、そして自分達も
立ち向かったがそれも虚しく三度目の敗北を喫して、そして今は潜伏中なのに、と。
そう、潜伏中なのだ。
だったら休むときは今だろうと、そう思うのだ。
今度は北の方へと拠点を考えているらしく、ならば尚のこと機体を休めていたいと
ハードマンは思う。
やられてしまった機体を修理し、次の機会に向けての潜伏期間。ならばそう仕事は
ないだろうとたかをくくっていたのだが、しかし準備期間というものは以外と
雑務が多く、ひどく面倒だった。
細かいことや煩わしいことは、性能もあってかハードマンにとって苦手な部類に入る。
それ故に今日も今日とて逃亡し、後々怒りっぽい気性の兄機体に怒られるだろう
なぁとのんびり思いつつ、だからこそ甘美なサボる時間をハードマンは堪能していた。
このまま寝てしまおう。
そう思いつつ目蓋を閉じる。しかしふと、降り注ぐ日差しが遮られた。

「こら」

「……何すか」
かけられた聞き覚えがないわけではない声に、ハードマンは眠たげに閉じたばかりの
アイセンサーを片方だけ開けて声を返す。青い装甲に囲まれた顔が、覗き込む
ようにハードマンを見下ろしていた。
思った通りの姿を視認して、ハードマンはげんなりと唸り声を上げる。
この青い機体が表れたということは、彼にとって心地いいサボりの時間が終わりを
告げてしまったことを意味するからだ。
「まぁたあんたかい…」
「お褒めに預かり光栄だ、ハードマン。おら立て、サボり魔を連行しに来た」
「あんたがそれ以外をしに俺んとこ来たことがあったかよ…」
渋々機体を起こしながら言うと、青い機体───フラッシュマンは楽しそうに
にやりと口端を釣り上げた。

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