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□contraire
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何となく呼ばれた理由の予想がついたらしい本人は、面倒臭そうに
自らの基地に赴いて行き、そして漸く処理が終わったらしく先程
ここへ帰還してきた。
どっかりとソファに腰掛け、テーブルにある銀のプレートにのった
メタルマン製の自分用チョコを一粒とりながら、フラッシュマンが呟く。
「あー、ここに比べりゃ可愛いもんだったよ。いつもの如く、他の
 基地からの差し入れ爆撃だ。ありがてぇ話だが、部下が半泣きだったぜ」
四男のクイックマンとは違い、六男のフラッシュマンは内部からの
人気が至極高い。ワイリー基地には毎年クイックマン宛ての膨大な
プレゼントが外部から届くことは部下の間でも有名なため、他の
ナンバーズ宛てには部下たちは各基地に贈るようにしていた。
中でも、フラッシュマンの基地には一際多くプレゼントが毎年届けられる。
それは出張メンテナンスのお礼だったりが主だとフラッシュマンは
解釈しているが、何も一々プレゼントにしなくてもとごちた。
ありがたいはありがたいが、そのせいで自分の部下たちがおおわらわに
なるのは可哀相だとフラッシュマンは思う。
「まあ、いいじゃないの、モテてるんだよ、フラッシュも」
「部下の可愛さとそういうのはまた別だ馬鹿野郎、出るとこ出た
 おねーちゃんから貰いてぇと思って何が悪い」
「わぁ、フラッシュ気持ち悪い」
エントランスホールからウッドマンとともに大量のチョコを抱えて
戻ってきたヒートマンが、愚痴を呟くすぐ上の兄にぽつりと漏らす。
チョコに隠れるようにたっているヒートマンの頭部には、末弟が
全員にプレゼントした花が飾られていた。
「喧しいこのお子様。ようウッド、花、俺にもありがとな」
「どういたしまして、兄ちゃんもアルバムありがとね。クイック
 兄ちゃん、追加これだけど……大丈夫?」
「ふ、ふふふふ…、チョコが百個、チョコが二百個……」
「あー、やめとけ、今は放っときなウッド」
どさどさとチョコを下ろしながら心配そうに四兄を伺うウッドマンに、
しかしフラッシュマンがそっとしておいてやれと制する。
青ざめた顔には張り付いたような笑みが浮かび、整っている分不気味さ
すら醸し出し始めていた。
そこに。
『警告、警告、領空内に飛行体三体侵入をレーダーが感知、繰り
返します、領空内に飛行体三体侵入をレーダーが感知、何かしらの
 投下準備に入る模様、目標地点予測エントランス付近、至急───』
とうとう現実逃避を始めたクイックマンを余所に、上空からの
何者かの接近を基地の警備システムが感知した。
しかし誰ひとりとして警戒体制に入るものはない。近づいてきた
ものが何なのか、容易に理解できるためだ。
トリュフを食べ終えたバブルマンが哀れむように声を上げる。
「あーあーあー…」
「おい、またきたぞクイック」
「言ってやるな兄弟、こいつそろそろ回路切れるぞ」
息子たちの声に、ワイリーがふむ、と鼻を鳴らした。
「これは今年はまた記録更新じゃな。フラッシュ、クイックが
 お前の言う通りシステムダウンする前に部屋に運んでやれ、
 贅沢な悩みとはいえ、流石にもう見てて哀れじゃ」
「……へーい、仕方ねえな…」
ワイリーに言われ、ぐったりとしているクイックマンをフラッシュマンが
肩に担ぎ上げる。普段なら馬鹿にするなと抵抗しただろう四男は、
何も反応せずにされるがままだった。それがより一層あわれだ。

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