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□cadeau
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「そっかぁ、あ、お味はどう?」
「ん、…美味いがもうちょい苦めがいいな」
「了解ー。あ、お兄ちゃんはお前の撮った写真がいいなあ、プレゼント」
「? そんなもん普段からやってるじゃねえかよ」
「んーとね」
摘んでいたときに溶けたのだろう、指に着いたチョコレートを
メタルマンがフラッシュマンの唇に塗り付ける。「何しやがり
ますかてめえは」とフラッシュマンがその赤い指を捻り上げた。
「痛い痛い痛い折れる。いや、確かに結構貰ってるけどさ、もっと
 欲しいしさ、何より」
それって大概お兄ちゃんでしょ? とメタルマンが首を傾げる。
「あ?」
「フラッシュ、写真頂戴って言ったらくれるじゃない? でもそれって
 つまり、頂戴って言わないとくれないでしょ。んで、写真が
 欲しいって普段から言ってんのは大概が俺でしょ? だから他の
 皆は意外に貰ってないんじゃないかなって思うんだけど、どうかな?
 ちょっとそろそろ本気でジョイントいかれる、ギブギブギブ」
「折れちまえ。……んー、まあ、確かに写真普段やってんのは
 大半がてめえだなぁ…けどよ、写真ってそんな嬉しいか?」
いや、俺は趣味だけどよ。訝しげに言いながら、フラッシュマンが
赤い指を手放して唇に塗られたチョコレートを舐めとった。
解放された指を軽く振ったあと、次のプレートに持ち替えてメタルマンが
にこりと目を細める。
「嬉しいと思うよ? フラッシュ、風景もよく撮るけど、意外に
 皆のことも撮ってるでしょ、お兄ちゃんあの日常風景凄い好き」
どうでもいいただの日常の一コマな様で、どこか視線が柔らかで優しい。
口にしたら怒りを買いそうなため、回路の中でつけたしながら
メタルマンはまた一粒チョコレートを差し出した。
「んー、……俺から言わせてもらえば、普段から特に言わねえんだから
 別にいらねえんじゃねえのって感じなんだがな。てめえだけじゃ
 ねえのかねえ、そんな物好き」
呆れたように言いながら、フラッシュマンが近づけられるそれを
また一つ頬張る。
「えー、そうかなぁ…。寧ろ普段貰わないぶん喜ぶと思うけど…、
 お味はいかが?」
「……ん、んん。この位が丁度いい。美味い」
「わ、やった! じゃあフラッシュはこの位の甘さでいいね。……
 まあとにかく、お兄ちゃんにはお前が写ってるやつね、ソロで!!」
「却下」
「酷い!」
「どうやって自分を撮れってんだ」
「タイマーがあるじゃない、何ならお兄ちゃんが撮って」
「両方却下、タイマーもてめえの腕も気に食わん。何より俺は
 撮るのが趣味だ。撮られんのは好きじゃねえ。ったく、ナルシストじゃ
あるめえに」
「えー…そんなこと言わずにー…」
寂しそうに食い下がるメタルマンに、フラッシュマンは「……
ふん」と鼻を鳴らして視線を外した。また雑誌のページをめくる。
すると、簡易アルバムの紹介コーナーが目に留まった。
アルバム。
「………」
ふと、フラッシュマンは考える。

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