Main2

□優越
2ページ/5ページ





「ックク……ざまぁねえなァ……!」
その哀れな姿に敬意を表して、じわじわとなぶり、遊んで、バラしてやろう。
ナンバーズだと識別できるその空っぽの頭部かその幻影でしかなかったマークを
残して、売れるものはすべて売っぱらってやる。
何げにその首には高額の賞金がふっかけられていることは、知っているものの
間では有名だった。こいつは下っぱかもしれないが、マークを施されている以上
それなりの金が舞い込むだろう。まったく、ワイリーとかいう気違い爺い様々
というものだ。
しかし、壁を前に立ち止まった獲物は、予想とは裏腹に何時の間にやら怯えを
霧散させ、余裕すら滲ませてこちらに向き直った。
「……?」
ずっと身を縮めるように屈んでいた姿とは違い、こちらを威圧するかのように
背筋を伸ばし、堂々と立っている。
「……? どうした? 諦めたのか、お人形サンよォ?」
嘲りの言葉を投げ掛けると、目の前の機械はこちらを同じく嘲るように、く、と
喉を鳴らした。
「ああ、これ以上遊んでも楽しめそうにないんでねェ、時間も来ちまったし?」
「……ぁあ"?」
思いの外丁寧に作られているらしい、先程まで聞こえていた悲鳴のような情けなさは
感じられない、人のものと相違ない声が口から出てくる。しかし、言われた
言葉の意味がわからず、浮かべていた笑みを止めて不審に歪めた。
───何だ、この変わりようは。
同じ奴とは思えないほど、雰囲気も何もかも違いすぎる。逃げ場がないという
のに先程までの様子はどこへやら、人形は一転して
不敵に口の端を釣り上げていた。
「さぁ、ショータイムだ」
「……!?」
訝しく思うと同時、白い右手が背後の壁に触れる。ひらり、と外套が翻り、
青い機体色が視界にうつった。
指の背が、こん、と壁を叩く音が鳴る。

次の瞬間。

その機械人形の後ろ、道を閉ざしてた壁や障害物が切り裂かれた。
ぶわり、と青い人形の纏う薄汚い布が舞い上がる。
きらりと何かが煌めいた。

「ッ!?」
「何だ……!?」
突然のことに驚き、数人が後退りながら声を上げる。
しかし、武器を構えなおす暇も与えられぬまま、切り裂かれた壁の向こうから
金色の武器を構えた赤い機体がこちらに飛び掛かってくるのが見えた。
「ぅわ、何だこいつ…ッ!?」
「!!?」
「は、速…───!?」
「もう一匹いやがったのか!!」
「───撃ち殺せ!!」
驚きの声と悪態が、次いで銃声が辺りに響きわたる。
飛び掛かってきた赤い機械はその勢いを殺さぬまま地面を蹴り、壁へと飛んだ。




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ