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「さぁなあ、博士も前に興味持って調べてたけどよ。ヒートはまた特別として、
 駆動力が比較的高いのは回りが早い可能性があるとかの要因は一応見つかった
 んだが、そん中でもまた強い弱いの差があっから、まぁ、結局個体差って
 ことに落ち着いたみてぇだったぜ」
「へぇぇ、駆動力…僕は兄ちゃんたちと比べてあんまり動くの速くないのになぁ…?」
「あー、お前はまた特別だろ。檜で出来てっから、特殊コーティングしてても
 材質上液体は回りやすいんじゃねえかな」
「そっかぁ…。って兄ちゃん何で飲んでるの!?」
六兄の説明に感心した声を上げてウッドマンが兄を見やると同時、末弟の驚いた
声が広間に響く。
ウッドマンが見ると、フラッシュマンは余った酒をビンから直に仰いでいた。
「んぁ? いや、勿体ねーだろ、こんな半端に残っちまって」
「そ…だからって兄ちゃん…!」
「平気平気、おめえにゃ迷惑かけねえからよ、ウッド」
ハラハラと心配そうな末弟にカラカラと笑いかけ、フラッシュマンは空になった
ビンをテーブルにおいた。
「そういう事じゃなくて、ここを片付けて、データ纏めしてからにしたらいいのに…」
そしたら気兼ねなく楽しめるし、休めるでしょ?
どこか労るように、心配そうな視線をウッドマンはフラッシュマンに注ぐ。
六兄は平然としているが、それでも一応任務の後なのだ。それなりに戦闘だって
あったし、帰還したなら本当はこんなことせずに機体を休めたほうがいいのだ。
自分と違い情報を扱うのを得意とする兄は、通常戦闘だけでなくデジタルでも
情報戦を繰り広げ、はっきり言って自分より任務内容の役割が多かったのを
こなしてきていた。だから、片付けなんて自分に任せて休んでほしいとウッドマンは思った。
「おいおい、任務に出てたのはお前も同じだろーが」
「ぅえ!? 何で僕が考えてること分かったの!?」
考えていたことを読まれて狼狽えるウッドマンに、フラッシュマンは楽しそうに
「お前は顔に出しすぎで分かりやすいからだ」と笑みを浮かべた。
「ちと心配しすぎだぞ、ウッド。でもそこがお前のいいトコだけどよ」
言いながら、フラッシュマンが穏やかな手つきでウッドマンの頭部を撫でる。
そのまままた床に転がるビンを拾い始める六兄の後ろ姿を見ながら、ウッドマンは
照れたように頬をかいた。
その六兄がときたま酒を煽る姿を取り敢えず黙認しつつ、ウッドマンは自身も
止めていた手を再度動かして部屋を片付け始める。部屋にはビンだけではない、
つまみのクズまでそこここに散らばっていた。たまに聞こえるむにゃむにゃと
言う寝言を聞きつつ、二人で広間を掃除する。
酔い潰れた兄弟機たちは、六兄の意向──というか、帰還早々手を掛けさせて
くれた礼だろうとウッドマンは思った──で、部屋の隅に一緒くたに固められていた。
傍を通るたび、青い脚部が転がっている彼らを悪戯に蹴る。フラッシュマンが
それをやる度にウッドマンが流石に兄を嗜めるが、それでも潰れている三人は
起きる気配がなかった。



粗方部屋を綺麗にし終えてから、しかし簡単に消えない染み付いた部屋の中の
匂いに「これはどうしようもないね…」と二人で諦めの言葉を交わす。
「まいったなぁ、エアー兄ちゃんみたいに換気できたらいいのに…」
「まあ、俺らのせいじゃねぇし、こいつらが精々博士と兄貴たちに絞られちまえば
 いいじゃねぇか。ここまでにしとこうぜ?」




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