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*A賀版です。




舞い上がる硝煙。擦る弾丸。けぶる視界に、機体が蒸発しそうな程の高温。
ああ、たまらない。
「あ゙ー………」
満足そうな声を上げて、フラッシュマンがだらりとその場に座り込んだ。






じゃきん、とフラッシュマンの周りに、幾数もの銃口が並ぶ。へらりとしまりのない
顔でそれを見て、フラッシュマンはあーはいはい、と両腕を上げた。
正義の味方をうたうものではなく、別の敵対組織が喧嘩を売ってきたため、
その中枢へ挨拶に行っていた青い機体。
しかしあっさり見つかり、逃げたものの今は追い詰められて、開けた屋外で白旗を
上げるように降参のアピールをしていた。チッ、と、取り囲んだ一体が忌々しげに舌を打つ。
「はん、これがワイリーナンバーズか」
「大したことねぇな」
「ざけんな、基地のシステム散々弄られて損害額いくらになるとおもってやがる」
「にしても気色悪い奴だぜ、スクラップ前ににやつきやがって」
「回路狂ってんだろ」
「いやぁ、アンタらとのお別れを惜しんでんのさ」
「はっ、ほざけ木偶」
追い詰めた獲物へ、今止めが刺されんと引き金がひかれる、そう思った次の瞬間。
ごうん、と。
青の真後ろで、突如業火が立ち上った。
フラッシュマンの背後に回っていた幾体かのロボットが炎に巻かれ、吹っ飛んだ。
「うわ……!!」
「なッ!?」
「地面から火柱が!?」
驚きの声や悲鳴を意に介さず、巨大な豪炎を背に、逆光で陰るフラッシュマンの
表情は最高に愉しそうな笑みを浮かべていた。その背後、炎の渦から同じく
笑顔の何かがぼやりと姿を現す。四角いもので機体を覆われた、炎を映したような赤と黄色。
「お待たせぇ」
「おせぇぞ、ヒート」
凄惨な笑みの二体が愉しげに言葉を交わした。
「何だアレは!」
「新手か!!」
混乱するように上がる声に、いくつかの銃口がそれに───ヒートマンに────向けられる。
二体に向かって今更のように引き金が引かれるが、もう遅い。
フラッシュマンのアイセンサーが真っ赤に輝いた。
「キヒヒヒ、ざぁんねんでしたぁあ可愛い木偶ども!」
「キャハハハハ!大丈夫、すぅぐトロケさせてあげるから!!」
二つの哄笑を響かせながら、フラッシュマンごと、辺りを業火が飲み込む。
取り囲んでいたロボットたちを、ヒートマンの軌跡にしたがって、炎が嬉々として抱き締めた。



「あんたもバカだよねぇ」
隣にいるフラッシュマンへ、ヒートマンはくつくつと笑いながら声をかけた。
「んだよ、作戦言ったらてめぇノリノリだったろォがよ。ノッてからダメ出しするもんじゃねぇよ」
「お堅いデカブツに叱られたらあんたのセイだから」
「共犯だろうが」
機体のあちこちを黒く煤けさせ、立つことも出来なくなったフラッシュマンは
傍の四角へ声を返しながら、べ、と舌を出す。
数秒前まで無傷だったとは思えないほどの有様。ヒートマンはやはりおかしそうに肩を震わせた。


舞い上がる硝煙、そして黒煙。擦る弾丸は炎の壁に競り負けた。業火にけぶり霞む視界に、
機体が蒸発しそうな程の圧倒的な高温。
辺り一面は、見事なまでの焼け野原。ネジの一つすら、落ちていない。
ああ、たまらない。
ぞくぞくと、フラッシュマンの背筋をパルスが走り抜ける。
「あ゙ー………」
満足そうな声を上げて、フラッシュマンがだらりとその場で力を抜いた。
迎えの船が、彼らの遠くに飛んでいた。




12年6月13日 更新

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