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「何か意見があるなら聞こう」
「いやはや、意見も何も拙者は無実で御座るよ」
「言いたいことはそれだけか」




「ねー、これなにごとー?」
部屋に入ってきた途端繰り広げられていた光景に、スパークマンはとことことソファに歩み寄った。
完全に我関せずといった感にテレビを見ていたタップマンが、「ああ」と声を上げる。
「ああなってる時点で分かってるでしょ、スパーク。いつものことだよ、シャドーが
 また何かいたずらやらかしたからニードルに説教されてんの」
「それはわかってるよー、そうじゃなくて、シャドーはこんかいはなにをやったのー?」
「それは僕も知らなーい」
のびをしながらそう答えて、タップマンは面白い番組が見当たら無いためリモコンを放った。
そして今まで見向きもしなかった日常の一コマ───何かいたずらをしでかしては
説教される末弟と激怒する長兄───にちらりと視線を流す。
少し破損にまで至っている忍者を模した機体のシャドーマンは、今は鎖でぐるぐる
巻きにされて天井から逆さまに釣りさげられていた。
その前にはニードルマンが仁王立ちして腕を組み、表情はやんわり微笑んでいるが
淡々とした口調と雰囲気で完全に怒っていることが伺える。そして何故か頭には
バケツが引っ掛かり、挙げ句ペンキがこびり付いていた。
確かに、末弟が何をしたかは知らない。知らないが、その光景を見れば酷く古典的な
悪戯だったのだろうと容易に想像がついた。
逃げ込んで追い詰められた形跡だろう、部屋の隅の壁に長兄が放った銃弾のあとが
集中しており、博士からまたお叱りが入るだろうなんて予測をする。
次兄のマグネットマンが怪しげな湯気のたつ液体をコップに注いでいるのを見て、
本当に相変わらずだなぁとタップマンは回路で続けた。
変な匂いが漂ってきた気がするが、すぐさまセンサーを遮断する。
その匂いに、今までのらりくらりとかわしていたシャドーマンも表情を引きつらせ、
途端に一転して白旗を上げた。
「あい分かった、拙者が悪かった、認めるで御座る。拙者の仕業に違いないで御座る。
 ただ、ほんの出来心だったんで御座るよ。謝罪する故に、もう勘弁するでござる」
マグネットの青汁はもう御免である故。
「ちょっと何それ酷いー、あんなに美味しいのに!」
全面降伏の決まり手が気に入りの青汁だということにショックを受けて、
マグネットマンがぷんすかと怒る。だが、何はともあれシャドーマンが白旗を
上げたことで進展を迎えそうな様子に、ニードルマンがやれやれとため息を吐いた。
しかしそこに。

「シャドーはどこだこらああああああああああ!!」
「俺の!俺の美しい顔にペンキが!!ペンキが!!」
「っさいナルシ野郎!ああもうたちの悪いもん仕掛けやがって、あいつ殺す!!」
遠くからスネークマンとジェミニマンの怒声が、次いで怒濤の勢いでかけてくる音が聞こえた。
リビングの空気が微妙に固まる。
「………まだ仕掛けがあったんだねー」
「うん、そだねー」
「……………出よっか」
「うん、そだねー」
もう何か早々と退散したほうが身のためだと、タップマンはスパークマンの手を引いて立ち上がった。
こういうとき面倒くさがり故にあまり巻き込まれることが少ないハードマンを
羨ましく、そして憎らしく思う。たぶん今も部屋で寝てるだろう。
腕を引かれながら、スパークマンはこくびを傾げた。
「はかせかせんぱいたち、だれかよぶ?」
「そだねー、博士が一番だけど忙しいかもだから、抑止力的な意味ならメタルさんか
 エアーさんかフラッシュさんがいいかなー。ウッドさんでもいいけど優しいからなー」
「あ、すぐへんじきた。エアーさんがきてくれるって、ついでにフラッシュさんも」
「おっ、やったね、じゃ迎えにという名目で逃げようか」
「おー」
ドアからはペンキまみれのぶち切れた機体たちが入ってくるだろう。故に、
タップマンとスパークマンは窓から飛び降りた。
案の定直後に響いてきた怒鳴り声と破壊音を背に、二機体は取り敢えず走りだす。
助け船がくる方向には、未だ姿は見えないけれど。



おわり


12年2月29日

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