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水泡が纏い包むは届かぬ手



意外に暖かいですよと笑えば、貴方は楽しそうに歯を見せた。
色に抱くイメージは分かりやすいものであれども、何時でも大概が一方的な
ものだからなと笑い飛ばした。
今日は冷たいですねと零せば、貴方は可笑しそうに目を細めた。
そこも含めてあるもの全てが均一でないからこそ、何時でも変化してそれが
面白いのだと言い放った。
けれどいつでもどこでも心地いいですよと呟けば、貴方は羨ましそうに微笑んだ。
笑い飛ばすでも面白がるでもなく憧れに似た少し寂しそうなそれに、しかし
問うより早く唇が動いた。
味わってみたいが、そこにわしは身一つで行けんからのぅ。

愛しそうに手をガラスに当てる貴方に、自分のそれを重ねて笑う。
ああ、そう貴方が言うのなら、自分が聞く様々な事を聞かせよう。
出来る限りの術を用いて、自分が見る様々な事を見せよう。
それに赤字が膨らんだとして、貴方は結局は笑ってくれるから。


10年5月12日 更新

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