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過ぎる時こそ同じだとして



動く、眠る、走る、止まる、造る、笑う、そして、愛する。
何にもかえがたい存在は常に忙しなくそして脆く、しかし圧倒的に先を行く。
それを追い掛ける術はなく、またそれをする必要はない。
この身が持つ力はそれに使うものではない。
自分達にとって絶対の存在は、しかし自分のような力を持たない。
だから造り上げたと言っていいだろう、その果てしなく繊細な動きを見せる両の手で。
絶対の存在に不可能なことをすべく、自分含め仲間たちは持った力を使う。
それに代償を支払ったとして、問題は大してない。
破損をしても代えはきく。その手続きにすら、最早かの方は必要ない。
しかしそれでも。
かの方が笑うからこそに、この力には意味が生まれる。
かの方より余程強靱なこの身は、常に忙しなく酷く脆いかの方に、再生をもたないが
故に到底適わない。
だが経過する時間に対する耐性は、かの方は自分達には滑稽な程に及ばない。
圧倒的に先を行くその存在には、どう頑張ったとて追い付けない。
感じる時が同じだとして、しかしそれは同じではない。
ひたすらに愛を注ぎ手を差し伸べるかの方が、そのまま遠くに行ってしまうことは、
持った力を使ったとして止められない。
貴方が笑わないならば、この身も力も意味など持たないというのに。


おわり
10年5月12日 更新

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