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□反応
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だからって本人に何の断りもなく触る奴があるか、とフラッシュマンが苛々と
吐き捨てると、クイックマンは全く悪怯れることなく不思議そうに再度口を開いた。
「俺の脚は保護材含めてけっこー堅いのに何でだ?」
「そりゃてめぇの性能上瞬発力がいっから保護材にも弾力性が必要だからだよ!
 自分の特性少しは考えろ!」
まったくこの兄は! とフラッシュマンは回路の中で毒づいた。
クイックマンはナンバーズの中でも随一の瞬発力と脚力を誇り、それが能力で
あり、戦闘力に秀でている何よりの理由でもある。そのため大腿部の保護材も
他の兄弟機とは少し違い、バネの役割を持たせるためにしなやかで弾力性に
優れたものになっていた。六弟の突っ込み同然の説明に、あぁ、なるほど、と
クイックマンは納得する。
「へぇ……。ん? あれ、つまりあれか、じゃあお前の脚は弛んでるってことになんのか?」
「ア、ホ、かああぁ! 俺はてめぇより精密に出来てんだって何回言わせんだ!
 ただ単にてめぇより衝撃吸収しやすいようになってっだけだ! ロボットに
 弛むもクソもあってたまっか!」
声を荒げる六弟の様子に、クイックマンは自分は疑問を口にしているだけなのに
何でこんなに怒られているのか理由が分からないらしく、だんだん不機嫌に
なってきた。むぅ、と眉間にしわを寄せる。
「……んなに怒鳴ることないだろ、少し聞いただけじゃないか!」
「てめぇがアホなことに加えて、そもそも聞く前に触ってくっからだろうがよこのデコ野郎」
「柔らかそうと思ったらつい」
「つい、じゃねぇ」
「でもホントに柔らかかった。なぁ、も一回」
「も一回、じゃねぇ!」
「いいじゃないか、減るもんじゃなし」
「セクハラ魔の常套句使うんじゃねぇえ!!」
「あーもー、うーるっさいな、何してんのさ二人とも!」
広間に響いていた珍妙な掛け合いを遮るように、七男のヒートマンの声が
割り込んだ。聴覚器を押さえて部屋に入ってきた七男は、いつもいつも、今日も
今日とて喧嘩している兄機体二人に、またか、という呆れた視線を送っていた。
くるりと一つ下の弟機体へと顔をむけ、フラッシュマンがクイックマンを親指で
ぐい、と指しながらヒートマンに訴えかける。
「このアホが脚触ってセクハラしてきたんだよ」
「……はぁ?」
あまりにも端的な喧嘩の原因説明に、ヒートマンがぽかんと惚けた顔をする。
ちょっと引いてすらいるヒートマンの様子に、即座にクイックマンが言い返してきた。
「セクハラじゃない、柔らかそうと思って触ってみただけだ」
「だからそれを止めろ、触んじゃねぇっつってんだよ、タコ!」
「本当に柔らかかったぞ、こいつの足」
「人の話聞けこのセクハラ魔が!!」
「っ! だからセクハラじゃっ……!!」



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