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□遊泳
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ワイリーナンバーズの中で、水中はバブルマンのみ唯一がテリトリーとする場だ。
他の兄弟機は機体に防水処理などは一応施されているが、浮力処置やバブルマン程に
水圧に耐性がある作りはしていない。
そのためバブルマン以外は水に入ると沈んでしまい、泳ぐことは出来ないうえ
あまり深く沈むと水圧にも耐えられず壊れてしまう。
それでも、少し怖いと言いながらも、水に触ることをやめない弟機体にバブルマンは
小さくくすりと笑みをこぼした。
「でも、触るの好きなんだね。そう言えば、水の中気持ちいいって言ってたもんね?」
「っ……!」
にこやかに言うバブルマンの言葉に、フラッシュマンは、しまった、と言いたげに
眉を潜めた。
「……まぁだ覚えてたのかよ、その話…」
「うん、クイック以降ヒート以外プール入って全員溺れたけど、あんな反応
 したのお前だけだったから、よく覚えてるよ」
酷く居心地悪そうな弟機体の声に、バブルマンは朗らかに返す。
バブルマンが制作され、特別にプールが設置されて以降、クイックマンを初めと
する弟機体たちは出来たばかり故の好奇心か、まるでワイリーナンバーズ
後発機の通過儀礼のように大半がプールに入り、挙げ句沈んで溺れるという
ことを経験していた。
その度に、沈んでいく弟たちをバブルマンは助ける羽目に陥ったものだった。
最初のクイックマンの時はバブルマンも酷く狼狽えたが、クラッシュマンも
同じ事をした時はああまたか、とあまり慌てる事もなく、寧ろ助ける時に
その機体の重さの方に驚いた。フラッシュマンも前例に漏れず溺れ、ヒートマンのみは
炎を使う機体故の恐怖感が勝ったのか飛び込んで溺れるまでにはいたらなかった。
ウッドマンは機体の素材のためかぷかぷかと浮かび沈むことはなく、溺れは
しなかったが不安定な水の中が余程怖かったのか、助けに来たバブルマンに
半泣きで縋りついた過去がある。
弟たちの反応のメモリを回想しながら、いやぁ、みんな可愛いねぇ、とバブルマンが
肩を震わせながらくすくす笑う。
そのバブルマンの様子に、笑うな! と少し恥ずかしそうな怒った声で
フラッシュマンがばしゃりとバブルマンに水を掛けた。別に水がかかったとて
どうということもないのだが、その方が面白いのでバブルマンが飛んでくる水を
ひらひらと避ける。バブルマンの笑い声と水の飛沫音が辺りに響いた。
この話題は、クイックマン以降溺れた事のある兄弟機にとって恥以外の何でも
ないので、大半が話題にのぼることを酷く嫌がっていた。
冷静でいれば、口と鼻の排気場所を押さえて水が侵入しないようにしてプールの
底を歩き、壁にある梯子を上ればいいだけだったので、溺れて慌てたのだという
事実が否が応でものしかかる。



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