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□信号1
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一般の研究施設にしては不自然な程に厳重な、自衛のためだけでは説明が
つかない程に過剰なセキュリティ。
流石、軽く調べた程度で既にきな臭かっただけはある。事前に探ったシステムには
ここまでの物理セキュリティの情報などなかった事で油断した。システムに
その過剰なガードマシンの数の情報がない事自体がフェイクだなどという事に
気付いたのは、相手方からの暖かい歓迎を受けてからだ。
誘い込まれた。
そのまま劣勢に追い込まれ、挙げ句この様だ。


フラッシュマンは皮肉に笑みを浮かべたまま予定とは大違いのメモリ内容を
回想し、回路の中で、クソッタレ、と吐き捨てた。
前方で、護衛役のクラッシュマンが、次々沸いて出てくる敵を破壊している。
それでも数にものを言わされ、じわじわと後退を余儀なくされ逃げた事で
辿り着いた先は袋小路。入り口も兼ねている出口は一つだけで、そこは絶賛敵が
押し寄せており、周囲が高く壁になっているクレーターのような地形。
任務時のしっかりとした声で、メタルマンが呟く。
「ハメられたな、これは」
「ですねぇ……場所も何もかも出来すぎだ。こーれは軽くやべぇな」
分かってはいた現状をメタルマンにはっきり言葉にされ、フラッシュマンは
諦めたようにやれやれとため息を吐いた。
ただの劣勢ならまだいい。罠に掛かったこちらの落ち度だ。その程度なら助けを
求めるなり何なりで、いくらでも奪回すればいいだけの話だ。
しかし問題は、通信回線を邪魔する電磁波が周囲に流されており送受信がきかず、
基地はおろかそろそろ合流予定の第二陣であるメンバーと連絡がとれない事だ。
後発隊がどの位置にいるのかの把握ができない。通信が、出来ない。
それが意味するのは、妨害電波を流す機械がもう出来上がっているという事実。
「俺たちの回線まで妨害するとは、厄介なものが開発されてしまったものだな」
「だから、それが出来ちまう前に壊すのが今回俺らの任務だったっつーのによ、
 もう造られてやがるたぁ癪だぜ。未開発だっての自体が囮情報だったとは全く
 やられたねぇ……。俺らはいわば、餌に釣られて誘い込まれた獲物って所か」
「偽りの情報で俺たちを油断させて待ち構えるとは、完全に敵の手の内だな。
 ……舐めた真似をしてくれる」
「しかも最高な事に、俺はもうタイムリミットだ」
通信ができないため後発隊の現在地把握が出来ない。しかし、合流予定時刻が近い。
そのせいで、フラッシュマンは特殊武器であるタイムストッパーが使えなくなった。
その第二陣のメンバーに、クイックマンが含まれているのだ。周囲に効果を
もたらすタイムストッパーは相手の特定がきかず、効果範囲に入ったもの全てが
対象になるため、場所の確認をせずに下手に発動させればタイムストッパーが
弱点武器である四兄がダメージを受けかねない。
クラッシュボムがまた一つ放たれ、前方で大きな爆発音があがった。

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