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□信号1
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信号 1


粉塵が爆風に煽られ、はるか後方へと散っていく。機体へ叩き付けられた砂粒は
装甲のセンサーを刺激し、隙間や保護材に纏わりついて、付着しきれなかった
分がさらさらと流れていった。ざり、と足元で地面を踏み付ける音がする。
乾いた瓦礫が辺りに散らばり、荒れた大地はひどく殺風景だ。開けた空からは
日差しが注ぎ、視覚システムがオートで調整を行う。そのすぐ横を、高熱を
もった光弾が何発も通り過ぎていった。
チリ、と装甲が僅かにダメージを受ける。
前方は敵の山。左右と背後は見上げるほど高い崖。地面が大きく抉れ、周囲が
壁になっているクレーターのような地形。減る残弾数。増え続ける敵の数。
後退する、自分達の足。
「……メタル?」
「ああ」
嫌な予感がする。
そう思いながら、十中八九同じ事を考えているだろう傍に立っている赤い兄弟機に
フラッシュマンは呼び掛けた。すると、六弟の呼び声に長兄のメタルマンは
肯定のような声を返してきた。兄の返事に、やっぱりか、と思いながら、
フラッシュマンは皮肉げに口角を釣り上げる。分かっちゃいたが、否定が
欲しかった考えに即肯定の声が返されるとはねぇ、と回路の中でごちた。
彼の先程の長兄への呼び掛けは、殆ど現状確認に近かった。
メタルマンに肯定されフラッシュマンが確認した事とは、彼らの置かれている
その現状とは、酷く厄介な事になっている、と言う事だった。



メタルマンとクラッシュマンとフラッシュマンの三人はワイリーに命じられ、
任務のためにとある人里離れた荒れた土地にいた。そこには、土地に不釣り
合いな大きめの研究施設がある。
今回の任務は、通信や信号について研究開発を行っているその施設からの
情報奪取と、研究内容とその施設自体の破壊という、よくある内容だった。
三人は先発隊として侵入し、メタルマンとフラッシュマンは主に情報奪取が、
クラッシュマンは二人の護衛が役割だ。この三人に与えられた最重要課題は
新手の妨害電波を発するという、開発中の機械の存在末梢。
情報のやりとり程、押さえられたり妨害されて厄介なものはない。
調べてみたら中々にきな臭い施設であったが、そんな所からそんなものが
開発されて出回ってしまえば後々酷く面倒だ。
だからこそ父たるワイリーから破壊任務の命が下されたのだが、相手方は
ワイリーナンバーズがやって来る事を予め知っていたかのように、盛大な歓迎を
してくれた。施設侵入すらナンバーズにさせることなく、門前から繰り出された
攻撃。彼らを待ち構えていたのは、うんざりする程の数のガードマシンたちだった。

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