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「博士が暑いと仰るので、突然ですが海に行きたいと思います」
「いってらっしゃいお土産よろしく」
リビングに珍しく八機体全員が居合わせたある日。
メタルマンの突然の発言に、しかし速やかにフラッシュマンが手を振った。
それに、エアーマンが少し呆れたように嗜める。
「こら、即座に留守番しようとするんじゃないフラッシュ」
「えー、行こうよフラッシュー、楽しいよ?」
「水に入ってもバブル兄貴と違って沈むので海に行く楽しみがないのでおとなしくも
 しとやかに引き籠もりたいです」
「しとやかってなんだよしとやかって」
バブルマンの誘いをさらりとかわし、フラッシュマンがソファに寝転がる。
傍で聞いていたクイックマンが訳が分からんと突っ込みを入れた。
「綺麗なねーちゃんがいるなら行ってもいい」
「それは諦めなよフラッシュ、博士プライベートでは人込みお嫌いだから、
 兄さん的に絶対人がすいてる浜を選ぶと思うよ」
「流石バブル、わかってるじゃないか。いい浜の情報あったらよろしく」
「うん、いい温泉が近くに湧いてる浜とか、高級旅館のあるとことか知ってるよ。一泊したい」
「却下」
「えええ酷いー」
長兄と三兄の応酬をよそに、ヒートマンが「僕焼きもろこし食べたい」と手を挙げた。
「あー俺は焼そばがいい」
「おい兄弟、てめえ、んな食うの面倒くせえもんに手出すなよ」
「食わせてくれ、弟」
「ざけんな」
「僕はかき氷がいいなぁ」
ほんわりとウッドマンが意見を述べると、何故だかフラッシュマンが手を伸ばして頭を撫でる。
「……? 兄ちゃん?」
「いや、何でもねーよ」
「あとイカ焼き食べたいー」
「おい、何か海っつーより海の家が目当てになってきてねーかヒート」
また手を挙げて食物を所望するヒートマンに、フラッシュマンが突っ込んだ。
「だって僕暑いのは別に平気なんだけど水はマジでちょっと」
「あー、まーそーだな」
「確かにな」
「クイックはどーしたいわけ?」
「水中トレーニングは負荷が強いからいい訓練になると思う。だから賛成」
「いやクイック、その意見はちょっと。遊びに行くんだよ今回は」
「いやもう何でもよくね?」
メタルマンに言われても、それを返すようにクイックマンは首を傾げた。
フラッシュマンの言うように、バブルマン以外は防水機能こそあれど水中では
沈んでしまい泳ぐ以前の問題だった。
目的が個々にバラバラであっても、結果海に行くのならどうでもいいのでは。
それがクイックマンの意見だった。
「エアーはどうなんだよ」
「俺は博士が行かれるなら勿論行く」
「へー。聞いた意味がない気がするけどエアーらしいな」
「はぁ、行くのは決定なわけか。で、いつ行くんだよ」
フラッシュマンが諦めたように言うと、メタルマンがにっこりと笑った。
「今から」
「はぁ!!?」
「博士が飛行船準備くださってるから、五分後にエアポートねー」
「つまり問答無用じゃねーかよ何で提案っぽく話振りやがったてめえ!!」
にこやかに去っていく長兄の背にフラッシュマンが怒鳴るが、その肩をぽんぽんとバブルマンが叩いた。
「はいはい、言っても無駄だから、僕らも行くよ、フラッシュ」
「わーい焼きもろこしとイカ焼きとたこ焼きー」
「焼そばあるといいなー」
「いやー焼そばは絶対あると思うよ、クラッシュ兄ちゃん」
一体だけ疑問を唱える青い色の横を、暖色系の兄弟機がきゃらきゃらと過ぎていく。
それを見送り、バブルマンは傍にいた赤い機体にくるりと顔を向けた。
「てなわけで、クイック、おんぶ」
「どさくさに紛れてこの野郎バブル」
指名され、渋々クイックマンがバブルマンを担いだ。今だに納得がいかないような
フラッシュマンの背を、ぽん、とエアーマンが撫でる。
「ほら、行くぞフラッシュ」
「………わぁったよ」
観念したのか、先を行く兄弟機を追うようにフラッシュマンも歩き始めた。
急かすように入る父からの通信に、困ったように小さく笑った。



おわり



12年8月29日 更新

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