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□伝達4
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気落ちしている四弟の姿を見て、これ以上苛めてやるのも気が引ける為、ところで、と
バブルマンが話を変える。この事態に陥った中で、どうにも気になる点があった。
「ねぇクイック、お前にフラッシュが懸念してたことをバラしたのってさ、
 もしかしなくてもヒートでしょう」
言われ、クイックマンはきょとんとして緑色の兄機体を見上げる。
「? ……そうだ。何でしってんだ?」
「あーやっぱり。……んー。さて、どうしたもんかなぁ。ヒートに話した僕にも責任があるからなぁ」
的中したことに、バブルマンが頭を抱えた。四弟脱走の切っ掛けを与えてしまったのは
どうやら自分らしく、七弟に吹き込んだことを後悔した。否、教えるだけなら
未だしも、それを念入りに口止めをするのを失念していたようだ。
「? ヒートに話したって、何だよ、じゃあ、バブルもあのハゲの考えに気付いてたのかよ」
クイックマンが若干不機嫌そうに言うと、バブルマンはいいや、と首を振った。
「僕もっていうか、否、多分、僕だけがね。ヒートに教えたのはついこの前。
 メタル兄さんもエアー兄さんも、今回のことで初めて知ったよ」
「……ふーん」
「じゃあ何でもっと前に教えてくれなかったって顔してるね」
どうにも不貞腐れた表情を浮かべるクイックマンに、バブルマンはやれやれと笑う。
すると、クイックマンはまた決まり悪そうにE缶を傾けた。
「うーーーん参った、僕、今回のことに他が関与するべきじゃないって偉そうに
 エアー兄さんに言っちゃったのに、完全に関与しちゃってるよ。参ったなぁ、どうしよう」
腕を組んで、バブルマンが染々と遠くを見ながら独り言のように言う。その内容に
クイックマンが驚いて兄を見た。
「はぁ?」
「あ、勘違いしないでよ、面倒臭そうだから関わらないなんて意味じゃないからね」
「…はぁ」
じゃあどういう意味だよ。
クイックマンがE缶をことりと置いて、寝台に座るバブルマンと視線をあわせる。
バブルマンはふぅ、と息を吐いて、あのねとマスクの向こうで口を開いた。
「僕は、君たちがもっと頭冷やしてから二人だけで話し合うべきだと判断してたの。
 ヒートに教えられてこんなことになったのがいい例だよ、クイック。だって、
 フラッシュ以外からとやかく言われたって、お前にはそれが本当にフラッシュの
 考えかどうかなんて分かんないだろう? だから、本人の口から聞きたくなって会いに行ったんだろう?」
「う……」
思い切り図星を刺されて、クイックマンが再度口籠もる。バブルマンは一旦言葉を切り、
さて本当にどうするかと頭を悩ませた。しょげていても視界に鮮やかな赤をちろりと見やる。
(…まぁ、出来なかったみたいだけど、謝るつもりだったってのは、クイックのいいところだね。
 形はどうあれ、心配してくれてたってことへの思いだろうし。この子的には
 仲直りしたいんだろうけど、だからこそあーもう…)
「全く、ヒートは帰ったらお仕置きだね」
問い詰めても悪怯れなくのらりくらりと逃げる黄色い機体の様子が回路に過るが、
それでも特殊武器一撃は確定かなとバブルマンは静かに誓った。





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