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□忘れ物
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時を追う毎に、フラッシュマンの眉間に皺が寄っていく。
「……んー、了解。あー今日たつのか、急だな。オーケイ、……サンキュ」
ごりごりとアイセンサーを押さえるフラッシュマンに、クイックマンはまったくと溜め息を吐いた。
「ったく…。ラボにも部屋にもいねーでこんなとこで。お前マジでないわ。
 機体信号も切ってるし。どこいったかと探したんだからな」
「あーーー…ワリ、熱下げんのに限界まで機能落としてたからな…」
「エアーが見たら拳骨もんだろ」
「……ってよぉ、経費削減とはいえこちとら辛いんですよぉマジで」
ぶちぶちと零すフラッシュマンに、クイックマンが手を差し伸べる。その手を
とって立ち上がり、怠そうに機体をのばした。
「っあー、キっツい……」
そうフラッシュマンが零したのを合図にしたように、だらだらと廊下を歩き始める。
薄暗いそこを行きながら、赤と青が肩を並べた。立ち上がっても変わらず怠そうな
フラッシュマンを見て、クイックマンはふんと鼻を鳴らす。
「軟弱者」
「煩い黙れ帰れ脳筋」
「さっきからマジ腹立つな誰が脳筋だ誰が」
「まぁ、分かんないの?」
「張り倒すぞ」
おどけたように言うフラッシュマンに、クイックマンが眉間に皺を寄せた。
そんな様子に構わず、フラッシュマンが続ける。
「つかてめえこんなクソあちぃのによく平気だな」
「お前みたいな軟弱者と一緒にされたくねーし」
「俺もてめぇみてーなゴリ押し野郎と同類には欠片もなりたくないわ死ねばいいのに」
「あーーーもーーーこいつ何なのマジうぜーーー」
どんなに切り返しても倍にして返してくる二つ下の弟機体に、クイックマンが
天井をふり仰いでお手上げのように声を上げた。
戯れるように悪態をつき合いながら、二機体はラボのドアを潜った。
スライドするドアに、中にいたワイリーが顔を上げる。対称的な二色の息子たちを
見て、おかしそうに笑みを浮かべた。
「おお、来たかお前たち。ご苦労じゃったクイック」
「連れてきました」
「連れてこられました」
肩を竦めてクイックマンの言葉を引きつぐフラッシュマンに、ワイリーがからからと笑う。
色の通りというか、暑さに強い四番目の息子と暑さに弱く逃亡していた息子の様子が楽しいらしい。
「まぁそう言うな、暑いのは分かるが、頼みたい任務ではそれなりに考えとるじゃろ?」
「そですねー、助かります。にしても急っすね」
言いながら、フラッシュマンは機器の前のメインチェストに腰掛けた。
片手で何やら入力し、システムを起動させる。
首根からコードを引き出し、挿入口に差し込んで背もたれにもたれかかった。
それに歩み寄りながら、ワイリーは表示データを見つつ答える。
「そうじゃな。どこから嗅ぎつけたか知らんが、いきなりお零れを勝手に頂戴した挙げ句
 早速実用に回したらしく些か礼儀を知らんようでの。けしからんことじゃて」
ピ、ピ、とモニタを示しつつ説明し、ワイリーがフラッシュマンと視線を合わせた。





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