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□忘れ物
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・10万打アンケート1位速光







軽やかに、鮮やかに舞う姿に、ただ。
軽やかに、鮮やかに舞う姿を、ただ。








「お前さーーーーマジでさぁああああーーーーー」

基地から上がる、どこか苛立ちと呆れを含んだ声に、オフで寛いでいた数体が意識を向けた。
声がしたのはリビングから少し離れた、しかし部屋が連なるエリアとは別、
ラボやバブルマンのプール等がある方向だった。しかし声の主と声をかけられた
存在が誰かすぐに察しがついたのか、騒ぎの方向に意識を向けた機体たちは顔を
互いに見合わせたあと、何事もなかったかのように再度やれやれと寛いだ。
その和やかなリビングの向こう。
節電か或いは経費削減か、照明の消えている廊下の片隅。
昇降階段がある薄暗いその場所で、クイックマンがイライラと床を見下ろしていた。
彼の視線の先には、────薄暗い隅で寝転がっているフラッシュマンがいた。
うんざりした様子で、フラッシュマンが赤い色を見てアイセンサーを眇る。
「何煩い帰れ」
「まだ用件なんも言ってねーだろうがくそうざい口だな!!」
「もぉーーーー何なんですかぁあーーーー只でさえじめついて暑いのにむさ苦しい
 奴のお相手はごめんなんですぅうーーーー俺は今猛烈に暑いせいで怠いんですぅうーーーー」
「だからってこんなとこで転がってんじゃねーよハゲ!!」
クイックマンが噛み付き返すと、フラッシュマンは会話を拒否するようにごろりと寝返り背を向けた。
日が出て暑い。風が吹いても暑い。雨が降っても暑い。とにかく何もなくても暑い。
そんな連日の猛暑と湿気でダウンしている彼は、少しでも涼を求めてここで転がっていたのだ。
懐事情から空調の温度設定に制限が設けられ、さらには使用時間まで限られているため
暑さから逃れる最も有効な手段が使えないためだった。
そこに彼を探していたクイックマンが訪れて、今に至る。
勘弁してくれと言いたげにボリュームを小さくし、擦れた声でぼそぼそとフラッシュマンが唸った。
「言いたいことそれだけ? なら用済んだだろどっか行け行って下さい頼むから俺は怠い」
「んなわけねーだろ! つか用済んでねーし!! 俺だって好きでお前んとこ来てんじゃねーよ!!」
イライラとクイックマンが続けと、じゃあ何なんだ、と言う色を視線に乗せて、
フラッシュマンが首だけをクイックマンに向ける。
「任務だとよ、俺とお前で! 博士からだ!」
「は、任務? てめえと俺で?」
それまで心底面倒そうにしていたのから、意外そうな声を上げてフラッシュマンは
アイセンサーを瞬かせた。漸くまともにこちらを見た生意気な弟機体に、クイックマンは
ぶすっとしながらも「ほらよ」と任務内容を送信する。
「んー…」
怠そうにファイルを受けてフラッシュマンが機体を起こし、座った体勢で回路で展開していった。




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