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□Sauvage
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「どっから出てきてんだ!?」
「びっくりしたんだよ! いつからそこにいた!?」
「いや、呼ばれる気がしたのでフラッシュ殿がいらした頃から影の中にて待機して御座った」
「何してんだよ…」
げんなりとフラッシュマンが肩を落とすと、してやったりとシャドーマンが歯を見せた。
そして、何やら満足気にふむふむと頷く。
「いやぁ、得たり賢し。それにしてもフラッシュ殿、相も変わらず良いおみ足で」
「……はぁ?」
フラッシュマンが訝しげに片眉をあげると、「この場所ははからずも眼福な角度に御座る」と
シャドーマンがあっけらかんと告げた。
「………おまえ馬鹿じゃないの」
「いやいや、かわらぬご様子で何よりと申してるので御座るよ」
他機を驚かせるのが好きな彼は、来訪した途端に突っ込み疲れたような前世代機体の
足元でかんらかんらと楽しそうに笑った。


一方で、さくさくと草を踏みしめながら、スネークマンは敷地の中を散歩していた。
その背中にふと、声がかかる。
「……逃げてきたのか」
「あぁ?」
くるりスネークマンが振り向けば、塀にもたれかかったハードマンがいた。
半目で眠そうな紺色はまるで見透かすように、刺々しい雰囲気のスネークマンを見ている。
「フラッシュが来てんだろ、今。スパークから通信入った」
「……てめーにゃ関係ねーだろ。サボり魔のてめーにとやかく言われる筋合いねーよ」
「俺は今日は何もサボってねーよ」
「……ケッ」
そういう事を言ってんじゃない。回路で零し、スネークマンはすたすたと歩を進めた。
スネークマンは、あの機体───フラッシュマン───と顔を合わせるのが、苦手だった。
うざくてうざくてたまらない、お節介な、あの青。
相変わらず距離もなく親しげに話し掛け、自分以外の手懐けられた同期たちは
きゃらきゃらと楽しそうに笑い合う。
そんな空間見たくなかった。居たくなかった。だから先んじてリビングから姿を消した。
自分だけが息が詰まりそうな、奇妙な閉塞感。
ハードマンは呆れたようにがりがりと聴覚器を掻く。
「……お前も面倒だな」
「あぁ? っせーよ」
それだけ吐き捨て、反りのあわない兄機体から離れるようにイライラとスネークマンは立ち去った。




「……ってな感じで、まぁこれで一応循環もうまくいくだろう」
「了解です」
供給管の不備を解消させ、フラッシュマンがやれやれと肩を回した。
ふむ、と唸るニードルマンの横、マグネットマンがのんびりとお礼を述べる。
「はー、終わったー! わざわざ時間まで作ってもらって、今日はありがとうございました。
 フラッシュさん北遠征の準備中でしたよね。忙しいでしょうに」
「いや、基地メンテは慣れてるからな。それにお前らはもとがもとだから覚えたら
 手際がいいだろ、こっちとは段違いだ。タップは危なっかしいのは足元だけで
 あいつ手つきは器用だし、スパークの電流は応用が利く。ハードはまぁしゃーないが、
 シャドーといい、器用な奴が多い。羨ましいくらいだ」





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