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□伝達3
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『…だから、元気かなって、それだけ』
少し間を置いて恥ずかしそうに続けられたメッセージに、くすりとフラッシュマンが笑う。
『サンキュ、ウッド。俺は元気だ。心配すんな。ただ謹慎くらっただけなんだから。そっちは?』
『ん……、博士は光学の研究に出たまままだ戻らないんだ。皆は、そうだな、まず
 メタル兄ちゃんとバブル兄ちゃんとで、クイック兄ちゃんとクラッシュ兄ちゃんのメンテ。
 エアー兄ちゃんは管轄基地に一旦行く用事があるからってことで今いない。
 ヒート兄ちゃんは単機任務に出たばっかり』
『なるほど、全員手空かずの状態か』
そんな中、折りを見てこっそり通信くれたのだろう末弟の様子が容易に想像できる。
本当に可愛い奴だと、ささくれだっていた回路がジワジワと癒されていった。
ぽつりと、ウッドマンがまたメッセージを送る。
『……いつ謹慎とけるの?』
『いや、知らん。メタルは何も言ってないだろ?』
『………んー、分かんないっていうか、聞けないっていうか、何ていうか』
『あーまぁ言わないだろうな。さぞかし近づきにくい空気だしてるだろ』
『うーん…、いや何ていうか、…そうだね。ピリピリしてるわけじゃないんだけど、
 何か近づきにくい、かな。色んな意味で』
ウッドマンが不本意そうに同意した。
普段はどうしようもなくブラコンだが、切れ者で仕事の出来る、任務時は恐ろしいほど冷静な長兄。
そんな両極端な面がある兄だが、一端切れたあとは至極不安定になる。
どちらの面でいればいいのか、うまく切り替えがきかなくなるのだ。
自分のせいとはいえ、やれやれとフラッシュマンがため息を吐く。
『まぁでも人出が足りないくらいじゃ謹慎とく理由には値しねーからな。これは
 要は俺に反省させるためなんだ、まだ暫くはこのままだろ』
『……そうかもしれないけど。兄ちゃんも悪かったかもしれないけど。人出は
 どうでもいいけど、僕は単純に兄ちゃんに会えなくて寂しいよ』
『可愛いこというなお前は。ったく、今度欲しいもん考えとけ』
そうメッセージを送ったところで、ジョーがキットを持って入室するのが見えた。
大事そうに抱えてとことこと小走りに近づく様に、「そこに置いといてくれ」と告げる。
兄弟機と通信中なのを知っているのか、寝台の傍にキットを置いて、ぺこりと
一礼してジョーが退出しようとした。しかしそこへ、慌てたように別のジョーが駆け込んでくる。
「!?」
「隊長、お休みと通信の最中に失礼します…!」
「…どうした…?」
いつになく慌てた様子の部下に機体を起こすと、同時にウッドマンからも通信が入った。
『兄ちゃん!! 今バブル兄ちゃんから通信入ったんだけど!』
「本基地のバブルマン様からご連絡が…、緊急用件ではないから伝言のみとのことで、
 我らから隊長へ通信するほどではないとのことでしたが、勝手ながら早くお伝えすべきかと…!」
「兄貴から…? どんな用件だ」
揃いも揃って、三兄からとは何事かとフラッシュマンが訝しむ。
通信するほどではないと三兄に言われたからか、それでも律儀に口頭で伝えに
来たらしい部下を見ると、モノアイが不安そうに明滅した。
「……クイックマン様が本基地からいなくなられたそうです…!」
『クイック兄ちゃんがいなくなったって!!』
声とメッセージで同時に来た同じ内容に、フラッシュマンが一瞬固まる。
「な、……!?」
『はぁあ!!?』
次いで部下への声と、末弟への通信。両方で、思わず疑問のそれを盛大にフラッシュマンが発した。





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