Main2

□伝達3
1ページ/11ページ


伝達2の続き
・破損、喧嘩あり




「隊長、お休み中失礼します。お加減の程は」
「………………」
控えめな声に、しかし声は返らない。どうにも気まずい居心地悪い空気のなか、
それでもジョーは退出せずにそのモノアイで青い色を見つめていた。
フラッシュマンが管轄する基地の、とある個室。ジョーの視線の先にはこの基地の主人がいる。
メタルマンより管轄する基地での無期限謹慎命令が下されて数日。
フラッシュマンは滞在用の個室の寝台で突っ伏していた。
謹慎前に長期滞在し粗方の雑務を片付けたせいで特にすることがないのも手伝って、
基地に来てからというものろくに部屋から出ていない。
動いてないためエネルギー消費も殆どないだろうが、補給をしているかもジョーたちには窺い知れなかった。
ジョーが、持っているE缶を手の中でどうしたものかと怖ず怖ずと遊ばせる。
いらないだろうと思いつつ、念のため持ってきたのだ。
しかし寝台に俯せになったまま、フラッシュマンは動かない。ジョーは困ったように視線をE缶に落とした。
(………………)
ついこの前、指揮官の長期滞在が終わり本基地への帰還の時は、確かに寂しいと感じたものだった。
しかし、こんなにも早くまた来た理由は、メタルマンより一応説明されていた。
指揮官同士の衝突。任務による破損を考慮して、距離を置くための措置。
要点だけで説明され、詳しい原因は末端に明かすようなことではないのかそれは
言われなかったが、指揮官がこの処置に不満なのは誰が見ても明らかだった。
なのに何も言わず、愚痴も言わず、こうして部屋からでないでいる。
そう、指揮官が愚痴を言わないのだ。愚痴が多いのが欠点にあがるほど、よく零していたのに。
普段なら些細なことでも零し、ゆえに自分達は指揮官たちの人となりを必要以上に知っている。
それだけ、この指揮官は兄弟機の話を自分達にしていた。
だからこそ、何も言わないのが心配でならない。恐る恐る再度声をかける。
「隊長、差し出がましいとは思いますが」
「………」
「我らでは力が足りないのは存じております。ただ、せめていつものように
 話を聞くことならば我らでも」
そう言うと、フラッシュマンがむっくりと起き上がった。
「……!」
「……………」
次いで、傍に来い、と招くジェスチャーをとる。すぐにジョーが傍らへ駆け寄った。
気まずそうにフラッシュマンが笑う。
「……心配かけてすまん、だが大丈夫だ」
サンキュ、と言い、ジョーの持っているE缶を受け取った。しかし、ジョーは
どこか疲れた様子のフラッシュマンを見ながら否、と首を横に振る。
「しかし、滞在が終わり帰還されてすぐに戻ってこられ、謹慎食らった、とだけ
 仰られてから殆ど何も言わずにこうして塞ぎ込んでおられます」
「別に塞ぎ込んじゃねーよ、これは……ただの自己嫌悪だ」
くしゃり、と苦笑いして、フラッシュマンはジョーの頭を撫でた。




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ