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□伝達2
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(────……!?)
ヒートマンがいよいよ嫌な予感に襲われ、兄の名を呼んだ。
「フラッシュ……?」
弟機体の呼び掛けに、しかしフラッシュマンは答えない。ただ、無感情に赤い色を見ていた。
そしてふ、と視線を下へと落とし、僅かに俯く。
「あれだけ大口叩いて、てめえだけならまだしも、クラッシュまで巻き込んで、そのザマか」
そう呟いた、次の瞬間。


ご、と鈍い音が辺りに響いた。


「ぐぁッ…!?」
次いで、がしゃんと金属がぶつかる音が響き渡った。クイックマンが壁に叩きつけられる。
「!?」
「な、!?」
やりとりを見ていた数名がぎょっと肩を震わせた。
────フラッシュマンの振りぬいた拳が、クイックマンを強く殴り付けたのだ。
「うわっ!?」
クイックマンに肩を担がれていたクラッシュマンが、床に投げ出される。
傍にいたヒートマンが咄嗟に支えた。
「…ぐ、ぅ……っ!」
叩きつけられたクイックマンが、苦しげに唸りながらずるりとその場に崩折れる。
ばちり、とアイセンサーが僅かブレるのが数名に視認された。
「クイック!!?」
「ちょ、フラッシュ!?」
悲鳴のように上がる周りの声を背景に、追撃のためフラッシュマンが床を蹴った。
アイセンサーこそ赤く染まっていないが、ぎらぎらと怒りを湛えたそれに、止めようと
ヒートマンとバブルマンが思わず手をのばす。
クイックマンは只でさえ機体にダメージを負っているのだ、これ以上のダメージを与えるわけには行かない。
だが、二機体の手は青へは僅か届かなかった。
そう感じた直後、その青の横顔を─────深い紅の拳が思い切り殴り付けた。
「っっ!?」
がしゃあ、と派手な音を立てて、今度は青い色が吹っ飛ぶ。
そのまま床に叩きつけられ、ラボの白い床を擦った。
「──────ッ……!」
ヒートマンが思わず縮み上がった。蹲った赤と青は、吹っ飛んで床を転がり、くたりとそのまま動かない。
たった数秒で起こった出来事に、ラボの中が痛いほど静まり返る。
かつり、とメタルマンが足音を立て、体勢をなおした。ぎらりと深紅のアイセンサーが光る。
マスクの奥で、冷たく堅い声が発せられた。
「破損した兄弟機に手をあげるなど言語道断だ、フラッシュ。理由も言い訳もいらん。
 今すぐここから出て自室に戻れ。そして連絡するまで決して出るな。反論は認めない。処罰は後程だ」
「…………っ」
メタルマンのまるで任務時のように冷たい声を受け、フラッシュマンは床に転がったまま
唇をぬぐいながら長兄を見上げた。そしてのそりと機体を起こし、倒れた体勢から立ち上がる。
今にも歯を剥きそうな様子で、しかし声は発しなかった。
「……………」
ぎらぎらと怒りをたたえたアイセンサーのまま、束の間深紅と睨み合う。
自身を殴った深紅の機体を、次いで崩折れた赤い機体を睨み付け、しかし何も言わずに
フラッシュマンがくるり踵を返した。
「………………」
凍り付いたように固まっているクラッシュマンとヒートマン、そして無表情の
バブルマンの前を通り過ぎ、そのままドアへと足を進めた。
かつりかつり、足早にフラッシュマンが立ち去る。





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