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□伝達2
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他の破損部位と明らかに異なり、恐らくは被弾したのだろう、半分ほど焼けて
えぐれた先から鋭い刃物で落とされたように、すっぱりと切断面が整っており
────それが何で切られたかを暗に示していた。
役割を終えたジョー達が一礼して退出する。彼らにできることはもうないからだ。
「…………」
クイックマンとクラッシュマンは一応歩けるらしく、台から二体が機体を起こす。
のたり、ふらつきながら台から下りた。
うまくバランスがとれないクラッシュマンを、クイックマンが支える。
メタルマンが慌てて駆け寄ろうとするが、それより早く、かつん、とフラッシュマンが近付いた。
「……!」
クイックマンが顔をあげ、こちらを見つめるフラッシュマンと視線をあわせる。
その青のどこか異様な空気に、周りが固まって視線を向けた。
少しの間、互いに無言で向き合う。次いで、ぽつりとフラッシュマンから声が零れた。
「腕は」
「………っ」
端的な言葉に、クイックマンがぐ、と固まるが、しかしすぐに口を開いた。
「俺が落とした」
「クラッシュのは」
「それも俺が落とした」
ほぼ単語の応酬は、決して大きな声ではないのにその場にいる全員に聞こえた。
「……?」
しかし、聞かずとも見ただけで答えなど分かっただろうに、───ワイリーナンバーズの
腕をこうまで切断できるものなどそうない為、自然クイックマンの武器でやったのだと
察せることから───わざわざ声で確認するフラッシュマンに違和感を覚えて、
不安そうにヒートマンが青い色を見上げた。
普段なら経過報告より何より先にメンテナンスを、という筈の兄は、しかしそんな素振りは見せない。
ただ黙って、破損した二体を眺めていた。
クイックマンが続ける。
「ダメージ受けて、使い物にならないわけじゃなかったが、邪魔になった、だから落とした」
「俺がへましたんだ、フラッシュ…!」
クイックマンの言葉を遮り、ボロボロのクラッシュマンが一つ下の弟機体を振り仰いだ。
しかしそれを黙らせるように、クイックマンが声を大きくする。
「違う。…俺が、引き際を見誤って突っ込んだ」
「………」
「追い詰めてると思った。そしたら、本当は誘い込まれてた。それに気付いた頃には、
 クラッシュが片腕に被弾して、それを助けようとしたら俺も片腕に食らった」
だから、と続ける。
「だから、落とした」
そう終えると、少しの間言葉が途切れた。そんな何とも言い様のない空気の中、フラッシュマンが口を開く。
「言いたいことはそれだけか」
「……っ」
疑問系でもなく、確認の為でもなく、ただ抑揚のない平坦な声でフラッシュマンが告げる。
その声からは何の感情も読み取れなかったが、酷く冷めていることだけはよく分かり、
クイックマンが押し黙った。




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